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2015-02-09 00:00
(連載2)「イスラム国」のYOUTUBEテロ
加藤 朗
桜美林大学教授
さらに洗練された手法を用いているのが「イスラム国」である。アルカイダがアラビア語とせいぜい英語で発信していたのに比べ、「イスラム国」はアラビア語、英語はもちろん、ドイツ語やフランス語など多言語で発信している。またハリウッドなみの演出を施した画像をYOUTUBで配信している。今回の人質事件はネットやYOUTUBEなしでは実行できなかった。さしずめYOUTUBEテロといって良いだろう。
ネットの発達によって、もっとも劇的な変化が起きたのは、既存のマスメディアとテロ組織との関係である。これまでテレビや新聞などの既存のマスメディアは、テロ組織のメガフォンの役割を果たしてきた。どのように報道されようと、テロ側にとって十分に宣伝効果はある。しかし、ネットの発達でテロ組織は既存のマスメディアに頼ることなく、自らの主張を世界中にくまなく発信することができるようになった。つまりテロ側にとって既存のマスメディアは 不要になったのである。イスラム国が記者を次々に人質に取るのも、記者の役割がテロ組織にとって低下したことの表れである。
事実今回の人質事件を見ても、現場での取材はほとんどなく、犯人側の要求をYOUTUBEやツイッターで探すなど、マスコミの取材現場はサイバー空間になっている。現地対策本部の置かれたアンマンの日本大使館前からの中継ほどむなしい報道はなかった。各局ともネット情報以上の報道はほとんどなく、日本大使館を映すばかりであった。
テロの舞台がサイバー空間に移ったことで、これまでとは全く異なるテロ対策が必要になってきた。画像は合成ではないか、常に真偽のほどを確かめなければならなくなった。メールもなりすましではないか確認が必要になる。そして最大の問題は、テロ組織によるネットを通じた広報、宣伝を規制するのか否かであ る。一部では「イスラム国」のネットを規制すべきだとの意見も上がり始めている。しかし、ネットの自由を原則にしている日本をはじめ欧米自由諸国は簡単にはネット規制には踏み切れないだろう。さりとて「イスラム国」の宣伝を野放しにすれば、彼らはさらにテロをエスカレートさせるだろう。 「イスラム国」のテロの狙いは、テロの語源そのものである「恐怖による支配」だ。まさにネットやYOUTUBEはテロにはうってつけのメディアである。(おわり)
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