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2015-02-02 00:00
数量史シンポジウムに寄せて
池尾 愛子
早稲田大学教授
第3回国際数量史シンポジウムが、今年7月に北京大学数量史研究所において『中国経済雑誌』との共同で開催されるという案内が経済史のメーリングリストに配信されている。数量的方法を用いた研究ならば、経済史、社会史、政治史、金融史、文化史、制度史などどのような分野の研究でもよく、言語は英語か中国語となっている。数量的研究に用いられるのは、金融や経済のデータに限らないであろう。しかし、実験経済学の名のもとで行われるアンケート調査や世論調査などが歴史研究で用いられるためには、ある程度の期間の継続的実施が必要となる。(英文案内 https://www.facebook.com/EBHSNews/posts/814761311922819)
2008年9月のリーマン・ショックの際に失職した人たちのうち、かなりの数に上る金融専門職たちが、中国の公的部門(国有銀行など)や研究部門に職を見つけたとのことである。それから約6年の歳月が流れたことになるが、昨年秋以降、訪日した研究者たちの発表などから、その影響を直接・間接に感じとることができた。例えば、信用履歴データベースが聴取り調査に基づくものも含めて着実に構築されつつある。実証ファイナンスでは、データの質の高さが研究の質の高さに密接につながることが認識されていた。世論調査と思われるデータに基づくユニークな社会経済研究の発表もあった。
これらとは別に、人民元を米ドルへの釘付けから解き放ち、資本勘定の自由化を敢行すれば、中国は為替変動リスクに直面し、投機家の標的にもなりえるという議論が中国語ができる人々の間でも流通しているようである。中国は為替変動リスクをとるのか、それとも「為替の安定性」をとり続けるのか、「板挟みにある」と表現されることもあるようだ。経済や金融の状況について、経済政策や金融政策について、データや事実に基づいた自由な研究が行われることを期待したい。そうすれば、中国の銀行など金融部門も変わっていくことができるであろう。
話題のトマ・ピケティの『21世紀の資本』(原著、2013年)では、各国の所得や資産の分配、資本収益率、種々の課税状況のデータが用いられ、各国でのこうしたデータの利用可能性が、各国経済の透明性と関連付けられた。そして、資本課税を含む課税方式の相違とその効果が詳論された。本書で取り上げられた中国データは少ない。冒頭で紹介したシンポジウムが、データベースの構築や数量的研究手法の普及につながることが期待される。昨年9月、本書の中国語訳が年内(11月頃)に刊行される予定であると聞いた。順調ならば、日本語版(2014年12月)の登場より早い。そのインパクトをぜひ知りたいものである。
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