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2015-01-28 00:00
島国根性で対テロ戦の揚げ足を取るな
杉浦 正章
政治評論家
島国根性というのだろうか。テロとの戦いを展開している首相・安倍晋三を一部野党や民放、三流評論家がしきりにあげつらっている。自らは遠く安全な場所にいて、双眼鏡で白兵戦を見て、あの撃ち方が悪い、この斬り方が悪いと論評する、日露戦争の馬鹿大将に似ている。その傾向があるのが「生活と何とかの党」代表の小沢一郎だ。安倍の難民援助2億円の支援をなんと「イスラム国への宣戦布告」と評した。「ドンパチだけが戦争ではない。人道支援は戦争そのものであることを、今回の事件で考えるべきである」のだそうだ。仮にも一党の幹事長をやった日本の代表的政治家が、まるで揚げ足取りに堕してしまっている。民主党の前原誠司も、代表質問ではさすがに矛先が自分に向かうのを意識してか、政府への協力姿勢を表明し、批判は控えたが、ぎりぎりの線では問題提起した。「各国は警戒レベルを引き上げている。その段階でISIS(イスラム国)と戦う各国に対して支援表明をするリスクをどのように想定していたか」と質したのだ。
要するに批判派は、安倍が人質殺害のリスクを知りながら、カイロで1月17日に「ISISと戦う周辺各国に総額で二億ドル程度の支援を約束する」と表明、これがイスラム国の死刑執行人が食いつくチャンスを与えた、と言いたいのだろう。確かに政府は事前に人質に関する情報を得ており、安倍自身も「昨年8月および11月にそれぞれ行方不明事案の発生を把握した」と認めている。8月に官邸に連絡室、ヨルダンに現地対策本部などを設置したが、事柄の性格上極秘裏に事を運んでいた。しかし、死刑執行人が映像に登場するまでは事態掌握は不可能であったに違いない。執行人は資金枯渇を目前にして、いつかは日本人人質を身代金要求に使おうと手ぐすねを引いていたのであって、首相・安倍晋三が中東に行こうが行くまいが、遅かれ早かれ実行に移したことだ。
究極の問題は毒蛇やサソリがうじゃうじゃいる洞窟に入る日本人がなぜいたかということになるが、いまさらなぜと言っても仕方がない。多数の国民の中には、必ず異常な行動をとる者が存在するのであって、近代民主主義国家はそうした類いの国民を含めて庇護する義務があるのだ。しかし、脇からテロリストとの戦いの足を引っ張ってはいけない。テロと戦う国々への日本の支援は、難民の生命がかかっている問題であり、切実かつ緊急を要するものであった。安倍が代表質問に答えて「1000万人以上の避難民の命を繋ぐための人道支援の表明であり、国際社会の一員として当然の責務を果たしたかった」と述べているのは、全く正当である。小沢の主張するように人道援助をねじ曲げれば、戦争支援という見方もなり立つが、それでは1000万人が餓死してもいいのかと言うことになる。さらに言えば、1000万人の命と小沢得意の国内政局への思惑をてんびんにかけるべきではあるまい。
非難されるべきは、人命を標的にしながら金をせびる、極悪非道なテロ集団なのであって、安倍が「リスクを恐れるあまりテロリストの脅しに屈すると、周辺国への人道支援はおよそ出来なくなる。我が国はテロに屈することなく、今後とも日本ならでの人道援助を積極的に推進する」と述べているのは、まさに正義の戦いの宣言に他ならない。そもそも安倍の2億ドルの人道支援は世界各国からもろ手を挙げて歓迎されているのであって、それに引っ掛けて死刑執行を実行しつつあるイスラム国の立場を支持する論調などはゼロである。繰り返すが、批判されるべきは過激派殺人組織なのであって、たこが自分の足を食らうような島国根性丸出しの政府批判は控えるべきだ。ただ中国の有力紙「光明日報」は26日の論評で、安倍の中東歴訪について「人質事件で安倍首相の平和主義には大きなリスクが存在することをより多くの日本国民が意識することになり、反省の声が再び表れるだろう」と伝えた。しかし、これは我田引水の独善論評であり、金満中国が次の対象にならないとは言えない。中国からイスラム国に何百人もの兵士が潜入していると言うが、黙認していていいのか。まず自分の頭のハエを追うべきだ。政府は毅然たる態度でイスラム国と対峙(たいじ)すべきであり、雑音に惑わされずに、次なる殺人予告への対処に全力を傾注すべきである。
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