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2015-01-25 00:00
ASEAN共同体の設立と進化に期待する
池尾 愛子
早稲田大学教授
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、2015年末の共同体形成に向けて進化を続けている。ASEAN共同体は、3つの概念(政治・安全保障共同体、経済共同体、社会・文化共同体)を基に設立される共同体とされる。特にASEAN 経済共同体(AEC)では、ASEAN 域内での物品の自由な移動、サービス貿易の自由化、投資の自由化、資本の自由な移動、熟練労働者の自由な移動等がうたわれている。物品の移動については、「ASEAN内では同じトラックで積み替えなしで運搬される」というのが、その象徴的イメージとして頻繁に紹介されているようである。
もちろん効率的な物流の観点からすれば、倉庫や物流ステーションで一時的にせよ保管される方が望ましいかもしれない。しかし、「同じトラックでの輸送」は、ASEANでの道路網の整備や情報通信技術による連結性(インターネット・コネクティビティ)も象徴しているようである。ASEANの一部(一カ国)に投資を偏らせるのではなく、ASEAN全体を投資対象として、生産基地とみなして投資を分散させてほしいというのが、ASEANの希望である。その実現に向けての重要なステップの構築が、「同じトラックでの輸送」のイメージによって伝えられているのかもしれない。
欧州側から欧州連合(EU)と比較されるのは、東アジアではASEANである。EUと同様に、ASEAN共同体でも国家主権が移譲されるわけではない。しかし、EUにおける欧州委員会(EC)や欧州議会のような機関の設立は計画されていない。欧州委員会(EC)はEUの『政府』であり官僚機構のトップであるといえ、ECは様々な政策や法案を、直接選挙で議員が選出される欧州議会に提案して承認を受ける。それゆえ、EUの決定に合せて、加盟国の国内制度や法律が速やかに調整されていくのであろう。EUの決定に比べると、ASEANそしてASEAN共同体の決定が加盟国の国内制度や法律に及ぼすインパクトは小さいであろう。それゆえ統合のスピードはEUほど速くはないであろうが、文化の相違を大切にしながら着実に統合プロセスが進むことを期待したい。
東アジアでの通貨統合の可能性について、内外の学生たちから質問を受けることがある。ASEANの2007年発表の統合優先分野には金融は入っていない。1月23日に学内で、フィリピン証券取引所社長兼CEOのH.B.シカット氏の公開講演会「フィリピン証券市場の現状・将来と投資環境の整備」が開催され、通貨や金融についてはASEANの(現段階の)統合計画に乗っていないことを確認できた。また、フィリピンでもイスラム金融への配慮がなされていることが紹介された。ASEANの宗教人口構成をみるとイスラム教徒の割合が最も高い。ASEANの文化的多様性、宗教により金融に対する考え方に相違があることに鑑みれば、通貨統合は遥彼方の課題であるといってよいであろう。
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