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2006-11-10 00:00
中国外交は21世紀東アジアのビスマルク外交か
滝田 賢治
中央大学教授
11月初旬、2年ぶりに訪れた北京では「友誼・和平・合作・発展」のスローガンがあちこちに溢れていた。連携強化を目指す中国・アフリカ首脳会議に向けたものであることは言うまでもない。確かに建国間もない1950年代以降、中国政府は多くの分野でアフリカ重視の姿勢を示してきており、2005年段階での対外援助額(約75億元=約1117億円)の半分以上がアフリカ向けとなっているが、現在、中国の最大の狙いがアフリカの天然資源であることは疑いない。こうしたアフリカへの外交攻勢ばかりか、すでに「デタント」のプロセスに入っているインドとの関係強化にも乗り出そうとし、胡錦濤主席は11月下旬にインドを始めて訪問する計画を発表している。北朝鮮の核実験以後、手詰まりとなってはいるが「6者協議」の主催者として東アジア国際関係においてプレゼンスを高めてきた中国は、21世紀東アジアでビスマルク外交を展開しようとしているのだろうか。それとも19世紀英露のように米中グレート・ゲームを展開しようとしているのであろうか。
既に2003年10月に中国は有人宇宙船「神船5号」の打ち上げに成功し、2005年にも同6号の打ち上げに成功し、アメリカに対抗し「宇宙からの監視」能力を世界に誇示した。またアメリカ中心の世界的傍聴システムであるエシュロンに対抗してEUが構築しようとしている衛星ナビゲーション・システム「ガリレオ計画」の開発と投資への参加を表明している。ロシアとの国境問題を解決し、同国との共同軍事演習を誇示し、「上海協力機構」を主導し、東南アジア各国とのFTA交渉を加速化しつつある。
世界人口の4.6%しかないのに世界経済の約3分の1を産出し、軍事費は一国で世界の50%弱(2005年)も占めているアメリカとの協調関係を重視しつつ、「平和台頭論」を基礎に「東アジアの忠実な仲介者」として全方位外交を展開しているとも観察できるが、前述のアフリカや南米、とりわけチャべス大統領のベネズエラとの関係緊密化政策は、ユーラシア大陸を越えたグローバルな米中グレート・ゲームの展開を視野に入れたもののようにも推測できる。前者であればアメリカ、オーストラリアなどにも開かれた「東アジア共同体」建設にとって大きな力になるであろうが、後者であるとすると一部の論者が危惧するように中国の「勢力圏」建設の一環になる恐れ無しとはいえなくなる。後者を抑え、前者を促進するためには中国社会の多元化を多国間主義で推進していくことが不可欠であろう。
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