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2015-01-07 00:00
(連載2)円安は日本の安売りという愚行
中村 仁
元全国紙記者
一方、輸入品に対する日本人の支払いは増えています。わたしが近くのスーパーでよく買うメキシコ産の有機栽培のバナナは、一袋約300円です。以前は袋に4本入っていたのが、最近は3本に減ってしまい、「えっ、おかしいぞ」です。一袋300円は変えていませんので、実質2、30%値上げですね。食料品ばかりでなく、輸入原材料が軒並み値上がりしています。円安によってそれだけ海外への支払いが増え、つまり日本の富が流出しているのです。原油価格がせっかく急落しているのに、円の下落も急で、そのプラス効果がかなり帳消しになっています。
日銀は「2%の物価上昇」の目標達成が宿願なので、輸入物価の値上がりを歓迎しているようですね。庶民感情とは逆です。日銀の目標にとっては都合よくても、日本人の所得の海外流出、日本の資産の対外的価値の減少が進むことは、国民経済的にはマイナスです。外国人旅行者にとっては、円安で安く日本旅行できるようなり、急増しています。日本人にとってはどうでしょうか。格安の海外旅行なら8万円ですんだのに、今では12万円も払わねばなりません。
米国は今年、金利引き上げに踏みきる予定で、ドル高・円安がさらに進むとの観測があります。米国は「強いドルが国益にかなう。米経済への恩恵が大きい」というスタンスです。弱い通貨は弱い経済競争力の象徴です。円安歓迎は、弱い経済力を誇るようなものです。
円建て資産をもっていると、円安が進んで損をするという外国投資家が増えれば、日本の株も国債も買わなくなります。日本人も海外資産を持つほうが有利と思うでしょう。そうなると、ますます日銀が国債や株を買い支えしなければならなくなり、円安が進み、金融政策のジレンマは深まります。そうならないうちに、経済の好循環が始まらなければ、金融政策に過剰に頼っているアベノミクスは窮地に陥りますね。このあたりで、円の下落を止めたいと思わなければいけませんね。(おわり)
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