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2014-12-24 00:00
国内志向企業に税優遇を
田村 秀男
ジャーナリスト
安倍晋三首相は「アベノミクス」を衆院総選挙の争点に据えて勝利したが、浮かれてはいられない。アベノミクス成功に向け、今後残された時間的ゆとりはさほど長くないからだ。2017年4月の消費税率10%実施は待ったなしだ。首相はそれまでに増税に十分堪えうるだけの、力強い成長軌道に日本経済を乗せ、15年デフレから完全に抜け出さなければならない。通常策では無理だ。日銀の黒田東彦総裁は、10月末に異次元緩和追加に踏み切った。安倍首相周辺では、「黒田さんが首相に消費税増税しても大丈夫と言ってミスリードしたことへのおわび。日銀にはさらなる追加策を期待できる」とみる。
しかし、異次元緩和=株高による実体経済へのかさ上げ効果は限られる。過去のデータから試算すると、株価が2倍に上がった場合、米国では実質成長率が15%程度増えてきたが、日本は5%程度の上昇にとどまっている。消費税率8%の重圧は、これからもかかり続ける。挽回策は賃上げである。首相は経済界や連合への賃上げを前にも増して強く求めるだろう。しかし、日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、3カ月後の景気先行き見通しは、大企業の製造業と非製造業、中小の製造業と非製造業のいずれもが小幅な悪化を見込んでいる。円安は輸出型業種を潤すが、逆に内需型企業はコストアップによる収益減を恐れている。今後来春にかけて産業界全体に賃上げムードが広がる情勢とは言いがたい。
4月の消費税増税は年間8・1兆円の負担を全家計に押し付けて、経済をマイナス成長に暗転させた。安倍首相はこの際、増税で打撃を受けた中低所得者向けに思い切った所得税減税、または増税分の負担軽減策をとるべきではないか。規模は5兆円なら、13、14年度の税収増による余剰収入で難なく賄える。安倍首相はさらに、1ドル=120円時代を日本企業の国内回帰に生かす政策を取るべきだ。中国の人民元に対して、円は12年12月に比べて、2年間で5割も下落した。しかも、中国経済は鉄道貨物輸送量という「モノ」で計れば、14年から15年にかけて実質マイナス成長が続きそうだ。日本企業が中国での生産・投資に見切りを付けて、本国に戻る動機は十分ある。
10兆円規模の大型補正予算も必要だ。その前提となるのは、東日本大震災復興、国土強靱化、地方創生を合わせて着実に達成する中長期の公共投資計画である。それを、アベノミクス第3の矢である「成長戦略」の規制緩和や戦略特区、地方創生プログラムに組み合わせればよい。さらに、戦略特区に海外から国内に回帰する企業を迎え入れる。国内志向企業にこそ税を優遇すればよい。安倍首相はアベノミクスを妨害する勢力を排して思う存分、スピーディーに成長政策を総動員すべきだ。
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