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2014-12-19 00:00
トルコを取り込むプーチンの地政学
川上 高司
拓殖大学教授
ロシアは天然資源を武器にパイプライン地政学を展開してきた。ウクライナ問題でヨーロッパとの関係が悪化しても、ブルガリアを経由するサウスストリーム・パイプラインの敷設は着々と進めてきた。だが12月上旬、プーチン大統領はついにサウスストリームを断念すると発表した。ロシアのガス最大手ガスプロムの代表は「This is it」とジョークを飛ばして、このプロジェクトを締めくくった。サウスストリームは黒海を通り主にブルガリアを経由して、南ヨーロッパに天然ガスを供給する。ウクライナを経由しないで安定した供給を南ヨーロッパにもたらすとしてヨーロッパからもまた、供給元であるロシアも期待が高かった。
ブルガリアは当初、ヨーロッパ諸国からの圧力にめげずにロシアの工事を許可し進めようとした。だがウクライナ情勢が悪化の一途を辿り、ヨーロッパ諸国からの圧力がだんだん強まったため、パイプラインに対して消極的になり始めた。そのためロシア側が工事を断念したのである。ブルガリアは、ガスを輸送するコストがかかるため今後は年に6億ドルの損失をこうむると嘆く。セルビアは、パイプラインの敷設という大型事業によってGDPが2%押し上げられると経済効果を期待していた。2008年には国営のガス石油会社の株の大半をガスプロムに売却してしまっている。セルビアの受けたダメージは計り知れない。
スロベニアにいたっては「お金の問題ではない。エネルギー安全保障の問題だ」と、ロシアとヨーロッパに挟まれた小国の悩みは深い。一方で今回の断念でめげるロシアではない。欧米の厳しい経済制裁をかわしてきた国である。ロシアはサウスストリームの終了とほぼ同じくして、トルコとのガス契約について供給量の拡大と値下げを発表した。トルコへの供給は「ブルーストリーム」と呼ばれるパイプラインで行われているが、今後トルコとロシアの経済的な結びつきが強まることは間違いない。
それだけではない。ロシアはブルーストリームの拡大とともに、トルコでの原子力発電所の建設契約も固めたのである。ロシアの原発企業であるロサトム(ROSATOM)はアックユに200億ドルの原発の建設契約を締結したが、さらに2基目の建設契約も着々と進めているのである。イスラムスンニ派トルコとは、シリア問題、イランとの関係、チェチェン問題で利害が対立している。にもかかわらずヨーロッパとユーラシアの要衝に位置するトルコとの経済的な結びつきを強めようというロシアの地政学は健在である。
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