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2014-12-15 00:00
新55年体制で安倍長期政権へ
杉浦 正章
政治評論家
この総選挙圧勝が意味するものは、自民党長期政権が保守合同以来38年間続いた55年体制が形を変えての再現であるかのように見える。新55年体制とも呼べる長期政権の体制が視野に入ってきたのだ。自公3分の2の325議席の達成はアベノミクスが成果を上げれば16年の参院選に向けてもプラスに作用しよう。万一参院で過半数を割っても、憲法の規定で衆院における法案再可決が可能となり、自公政権の下野はあり得ない。2度にわたり総選挙で自民党を大勝に導いた首相・安倍晋三の功績は大きく、長期政権の基盤は整った。安倍はアベノミクスの仕上げの時間を確保し、来年早々公約である原発の再稼働、通常国会後半の集団的自衛権行使のための安保法制を断行する。長期的には憲法改正への動きを見せるだろう。保守合同以来20回の総選挙で自民党が290議席を上回った例は、池田勇人296議席、中曽根康弘300議席、小泉純一郎296議席、安倍信三294議席と今回の290議席の5回ある。安倍は2度にわたって290を達成したのであり、前代未聞の功績である。この結果、来年9月の自民党総裁選では再選が確定的となった。最有力後継候補の石破茂が負ける総裁選に立候補するかどうかが焦点だが、ここは自重した方が本人のためだ。
自民圧勝の背景は、何と言っても野党の選挙準備が整っていない内に断行した「急襲解散」という戦術面にあるが、最大の勝因は有権者の民主党政権時代へのアレルギーがなお継続していることを物語っているのだろう。民主党に勢いが戻っていたなら100議席台を確保して次の政権交代への基礎を固めることが出来たが、73議席がやっとでは予見しうる将来の政権復帰は考えられない。代表・海江田万里が議席を失って辞任するという事態が全てを物語っている。まだまだ有権者は民主党の政権政党としての復活を許していないのである。さらに政権交代可能な2大政党時代を招くとした小選挙区制が、3回連続で一強多弱型選挙結果をもたらしたことは、当初の構想が誤判断であった事を意味する。死票が多すぎる現行選挙制度は、有権者の多様な民意を反映できない。中選挙区制の方が2大政党の色彩が濃かったくらいだ。導入への旗振り役であった元衆院議長・河野洋平が陳謝を繰り返しているが、日本型政治風土に馴染まない制度は早期に中選挙区制に戻すべきだろう。
加えて長期にわたるデフレにあえぐ有権者は、アベノミクスに賭けた側面が大きい。デフレ脱却の手段を持たないまま民主党がアベノミクスを批判しても説得力がなく、「この道しかない」というサッチャーの名言を踏襲した安倍の方が信頼感を発揮したのであろう。さらに逆説的に重要ポイントとしてあげられるのは、中国と韓国の選挙への「貢献」である。中国公船は尖閣諸島の領海への侵入を常態化させており、安倍との会談で見せた習近平の無礼な態度は逆に安部への支持を高めている。太平洋を米国と2分割して海洋進出を図ろうとする中国に対して安倍は集団的自衛権の行使容認を軸に日米安保関係を強化するとともに、豪州、インド、フィリピン、ベトナムなどとの対中けん制包囲網を築いてきた。過去2年間のこの姿勢は周辺国から軽視され切った民主党政権時代の外交・安保政策を反転させるものであり、国民の支持を獲得したのだ。対韓外交も大統領・朴槿恵と歴史認識などで安易な妥協に走ることなく毅然と対応していることへの評価もプラスに作用した。
安倍が維持してきた姿勢の内、原発の再稼働と集団的自衛権の行使の法制化は自民党の公約にも掲げられており、今後は着々とその実現を図ることになろう。原発再稼働はこれまで停滞しがちであったが、川内原発を皮切りに早期に再稼働を果たすべきであろう。原子力規制委もサボタージュのような遅延策を取るべきではない。また再稼働の条件を設定した以上、その条件に合致した原発新設も推進すべきであろう。まだまだ原発に代わる代替エネルギーなどは遠い将来の話であり、一部マスコミや野党のように夢物語をして世界一高い電気料金で国民を窮状に置き続けるべきではあるまい。集団的自衛権の行使への安保法制も粛々と進めるべきであろう。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改訂は、国内論議を配慮してか遅滞しており、極東情勢の激変を念頭に早期に「対中抑止力」を前面に打ち出すべきだろう
憲法改正について安倍は14日「憲法改正はわが党にとっては悲願であり、立党以来の目標だが、衆参で3分の2の多数を形成しなければいけないという高いハードルがあり、まだそこには至っていない。それに向かって努力していくと同時に、憲法改正に向けた国民的な理解が深まっていくよう努力していきたい。憲法改正の必要性について訴えていきたい」と述べた。これは当面アベノミクス、原発再稼働、安保法制にエネルギーを注ぎ、改憲は折に触れて問題を提起しつつも、再来年の参院選挙で「参院でも改憲発議の3分の2を目指す」という長期戦の構えであろう。 維新の不振は、国民のガバナビリティ(被統治能力)の向上を意味する。無責任な「風」で選択する事の危険を民主党政権とそれに続く第3極ブームで思い知ったのである。維新は共同代表・江田憲司が人気が湧かないどころか、足を引っ張った感じが濃厚だ。共同代表・橋下徹は合併して判断を誤った。両者のあつれきが強まりそうだ。共産党は民主党がだらしがないから反自民票の受け皿になっただけ。漁夫の利であり、法案提出権は得たが、国政には何ら影響は出ない。
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