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2014-12-09 00:00
首相もあきれた御用学者・エコノミストのウソ論法
田村 秀男
ジャーナリスト
これまでの筆者の主張通り、安倍晋三首相は来年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを先送りした。首相はさらに衆院解散・総選挙に踏み切って、国民の信を問う。現行の消費税増税関連法には「景気弾力条項」があり、首相は経済状況次第で、増税実施を見送ることができた。なのになぜ、解散総選挙にまで突き進んだのか。11月4日から18日まで5度にわたって消費税再増税の是非を討議した政府主催の点検会合は、その謎を解く鍵になる。会合メンバー人選は財務官僚主導である。その原案では、昨年の消費税増税点検会合で「増税反対」を明確に唱えた学者・エコノミストは全員が外されていた。不公正ぶりに安倍首相は激怒し、「賛成・反対を50対50にしろ」と見直しを急遽スタッフに命じたが、時すでに遅し。本田悦朗内閣参与が奔走したが、増税反対派の若田部昌澄早大教授、若手エコノミスト片岡剛士氏、そして宍戸駿太郎筑波大学名誉教授を追加するのが関の山だった。
会合では財務官僚の筋書き通り、地方自治体、労働界、財界、中小企業団体、消費者団体の各代表の圧倒的多数が増税やむなしだった。これらの多くは増税による財源という「アメ」に弱い利害関係者に過ぎない。問題は経済学者やエコノミストである。財務省寄り学者は「増税見送りの政治コストが大きい」(伊藤隆敏政策研究大学院大学教授)と「政治」を引っ張り出すザマだったし、吉川洋東大教授は脱デフレ策を聞かれると「1、2時間では説明できない」と逃げた。財務省寄りの金融機関系エコノミストは7~9月期の「想定外のマイナス成長」について「天候不順」はもとより「エボラ出血熱」まで持ち出すありさまだった。
これらの要因で景気が悪化し、デフレになるというなら、財政・金融政策も、経済理論も無用であろう。御用学者が支離滅裂な論拠を持ち出さざるをえないほど、今年4月の消費税増税ショックはすさまじかったのだ。再増税を見送っても、消費税率8%の後遺症は重く、消えない。昨年初め以来増え続けてきた実質GDPはこの7~9月期年率で5・7兆円減った。アベノミクス開始以降の年2%台の実質経済成長率を維持していれば、16兆円以上増えていたはずなのに、逆ブレした。このまま何もしなければ、今年度の実質経済成長率は前年度に比べてマイナスに落ち込みそうだ。
過去の自公政権は成長率が高くなると有権者の支持を集め、マイナスになると民主党が躍進した。安倍首相が今回のタイミングの総選挙を逃すと、来春以降は支持を大きく減らし、ひいてはアベノミクスそのものが雲散霧消する恐れがあった。安倍首相は総選挙の賭けに出た。アベノミクスが日本再生を実現する唯一の道である以上、大義は安倍首相にある。民主党は「アベノミクス失敗」を騒ぎ立てるが、財務官僚の言いなりになって増税法案を通した責任は頬被り。なんとも、お粗末だ。
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