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2006-11-08 00:00
APECは何の役に立っているか
山澤 逸平
国際大学学長
今年もAPEC会議の季節となった。来週初めにベトナムのハノイで、一連の準備会合が始まり、11月16-17日に閣僚会議、18-19日には首脳会議が開催される。首脳会議には安倍新首相とともに、ブッシュ大統領、胡錦濤主席、プーチン大統領等、アジア太平洋の21カ国の首脳が参加する。新聞の一面を首脳達が勢揃いした写真と首脳宣言の大見出しが飾ろう。各国政府のAPEC担当者にとっては1年間の作業の総仕上げである。しかし一般読者がAPECについて聴くのはこの週間しかない。APECは何の役に立っているのか。
11年前の1995年のほぼ同じ日付で、日本は大阪APECを主催した。街並みには花が飾られ、APECの旗が貼られ、首脳会議の当日は厳しい交通規制が敷かれた。来週ハノイでは街をあげてのお祭り騒ぎとなろう。ファン・ヴァン・カイ首相が首脳会議議長としてハノイ宣言を読み上げるだろう。これだけの顔ぶれが集まるのはベトナムにとって初めてであり、そこまで国際社会に復帰した喜びに浸るだろう。これが毎年主催国で繰り返される。グローバル化の中で、オリンピックやEXPOのような世界の祭典が国際協調の象徴の役割を果たすようになった。APECもそのひとつになっている。
さらに首脳が集まる機会を利用して一連の小規模の首脳会議が開かれる。安倍首相も胡主席や盧大統領と会談して中韓との関係修復を強めるだろう。APEC首脳会議は重要な政治的役割を果たすようになっている。われわれアジア側にとって大事なのは、APECが米国、そしてカナダ、メキシコといった太平洋の向こう側の国々とのトップレベルでの協議の場を提供してくれることである。
APEC本来の経済協力はどうなったか。大阪APECの前年、首脳たちはボゴール宣言を発表して、「2010-2020年までにアジア太平洋地域で自由で開かれた貿易投資体制を達成する」と約束した。それをどのように実現するかの『大阪行動指針』作りが翌年の大阪APECの課題となったわけである。1997年から各国が自由化・円滑化措置を自主的に実施し、その成果を個別行動計画(IAP)として毎年発表している。他方共同行動計画(CAP)では参加国が共同実施している経済技術協力の成果が発表されている。これらはすべてAPEC事務局のホームページに掲載されて誰でも読むことができる。
近年東アジア共同体の方がクローズアップされて、APECの影が薄くなった。しかし構想だけが先走りしている東アジア共同体に比べて、APECはすでに16年間地道に成果を重ねてきている。2010年には日本が2度目のホストをすることになっている。ボゴール宣言の先進国の達成期限が来る年である。来週末、言葉だけでなく、実のある成果が発表されることを期待したい。
(注)APECの自由化円滑化の実施状況についての説明については、3月千葉大学がAPECの支援を受けて開催したAPEC能力構築国際会議で筆者が報告した”APEC’s Trade and Investment Liberalization and Facilitation (TILF): Its Achievements and Tasks Ahead”を参照されたい。APEC事務局が来週配布するAPEC研究報告に収録されている。
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