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2014-11-15 00:00
イランへのオバマ大統領の書簡外交
川上 高司
拓殖大学教授
イランの高官は、オバマ大統領からイランの最高指導者ハネメイ師あてに手紙が届いた、そして返事を送ったと公表した。イランとアメリカは1979年のイラン革命以来国交は断絶、昨年からは宥和路線に転換しているが、オバマ大統領就任以来4通目の親書だという。
手紙の内容は当然ながら詳しくは公表されていないが、イラン側によればイランの核開発の問題が中心だったという。だがそれだけではなかった。さらに踏み込んでISIS問題についても言及があったという。イラン側の発表によれば、アメリカとイランはISIS問題では共通の利害を持っているので協力関係を築くことも可能だとオバマ大統領は主張しているという。ただし、六カ国協議でイラン核開発問題で決着がついた暁には、という条件がついていた。
逆に言えば、ISIS問題でイランの協力が得られるなら核問題で譲歩もあり得るという可能性を暗に示しているともとれる。それほどISIS問題は行き詰まっているということに違いない。イスラエルによれば、この外交文書はイスラエルも他のアラブ諸国も知らないうちに届けられたという。イラン外交に関してはアメリカはかなり本気である。六カ国協議以外にも、アゼルバイジャンでイランとアメリカがこっそり会合を開いてテヘランにアメリカの貿易事務所の開設を話し合うなど本格的な外交の復活の準備に余念がない。
だが、イランでのアメリカへの不信が消えたわけではない。「メディアではオバマ大統領はなぜイランを容赦なく非難するのか。親書ではフレンドリーなのに」と、イラン国会の議長はオバマ大統領の真意を測りかねて困惑している。イランでは、要人の発言が公私で異なるなど「あり得ない」からだという。こうなるともはや文化の違いとしか言えない。ネット時代で要人の言動は瞬く間に世界を駆け巡る。もちろんオバマ大統領は自らの発言の効果を計算している。だからこそ、繊細な部分は書簡という古典的な手法を用いるのだろう。外交の極意はやはり手紙にあるに違いない。
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