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2014-10-20 00:00
中国人の「銀座の宴」はたけなわ
田村 秀男
ジャーナリスト
10月1日は中国恒例の国慶節で、週末まで仕事は休み、一部は東京・銀座に来た。デパートのルイ・ヴィトン売り場にはブランドものを着た中年の男たちが出たり入ったり。今の日本人には絶えて久しい、ギラギラした精力を発散していた。もちろん、中国からのお客さんだ。中国人団体ツアーを案内している業者に聞くと、「複数のガールフレンドへのみやげに同じ天然パールのネックレスを何セットもまとめて買うことなんてざら。定番の夕食セットが気にいらず、1人10万円以上もする特別メニューに切り替える団体さんもいる」という具合だ。
何しろ、人民元は円に対して昨年初め以来、二十数%高くなったし、しかも、モノを買っても消費税率8%は免税。おまけに中国の高利回り信託商品に預けていると年10%前後の金利が入る。増税と実質収入の目減りにげんなりしているわれわれと違って、かれらにとって「日本はとにかく安い」のだ。富める中国人の急増の背景にはもちろん高度成長があるに違いないが、統計データの信憑性に問題がある国内総生産(GDP)では説明に無理が生じる。筆者がそこで、着目するのは中国の通貨、人民元の発行量である。
「リーマン・ショック」が勃発した2008年9月以降の、米国と中国の中央銀行による通貨の発行量(マネタリーベース、人民元はドル換算値)増加額の推移を追ってみると、米連邦準備制度理事会(FRB)は3次にわたる量的緩和によって現在までにドル発行残高を4・5倍増やしたが、中国人民銀行はそのドルの増加規模にほぼ、ぴったりと合わせて人民元を増発してきたことがわかる。中国は人民元のドルに対する為替レートの変動を上下各1%の幅に限定する「管理変動相場制度」をとり、わずかずつ人民元相場を引き上げてきた。中国に流入するドルなど外貨をことごとく人民銀行が買い上げて、人民元を発行する。このシステムのもとでは、ドルが大量発行される限り、人民元をふんだんに発行しても、人民元の通貨価値を高めに維持することが可能である。
大量に増発される人民元は人民銀行から国有商業銀行などの金融機関に供給され、それが原資となって不動産開発投資が盛んになり、リーマン後の投資主導型高度成長を実現した。不動産投資で資産を運用する中間層以上の階層が豊かになり、党幹部など特権層は権力をテコに巨額の不正利得をかせいできた。銀座での中国人観光客のにぎわいぶりは今後も続くのだろうか。習近平国家主席は汚職腐敗の取り締まりを強化した。不動産市況の全国的な悪化も明らかにマイナス材料だ。しかも、米国の量的緩和政策はこの10月中に終了し、ドルの供給は今後増えなくなる。ドルと無関係に人民元を増発すれば、中国が高インフレに見舞われる恐れも生じる。銀座での中国人客の宴は今がピークだろう。
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