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2014-10-17 00:00
(連載2)憲法九条の想定外の「国際紛争」
加藤 朗
桜美林大学教授
「他国との紛争」に代わって「国際紛争」という文言が使用されたのは、帝国憲法改正案委員会小委員会第4回(1946年7月29日)以降である(『帝国憲法改正案委員会小委員会速記録』(現代史出版、2005年))。冒頭芦田委員長が次のように発言した。「又、第2項の『他国との間の紛争の解決の手段・・・』という表現はあまりにもだらだらしていますので、この文章も『国際紛争を解決する手段』と修正するという提案もありました」との記述がある。つまり憲法九条が想定している「国際紛争」とは、日本と「他国との紛争」であって、「他国内における非国家主体との紛争」ではない。
そもそも憲法制定時に、「他国内における非国家主体との紛争」など全く想定していなかったはずだ。憲法九条の目的はあくまでも日本を非武装化し、二度と「他国と紛争」ができないようにすることだったからである。しかるに現在の「国際紛争」は、「他国との紛争」よりもむしろ憲法九条の想定外の「他国内における非国家主体との紛争」が主流になりつつある。つまり、第三国における武力行使は憲法上禁止されていないという北岡氏の主張は、論理的には正しいことになる。だとすれば、憲法九条が想定していない国際紛争に武力の行使は許されるのだろうか。
現在アメリカは、イスラム国に対する攻撃を自衛権で正当化している。はたして自衛権で正当化できるかどうかは微妙だが、日本がアメリカに協力を要請されれば明らかに集団的自衛権の発動となる。ただし憲法九条の想定外の「国際紛争」であるために、集団的自衛権の発動がはたして憲法違反となるかどうかは微妙である。
あるいは、集団的自衛権の発動ではなく日本が推進している人間の安全保障の「保護する責任」、あるいは戦時における婦女子の人権擁護の人道目的でイスラム国への武力行使をアメリカあるいは国連から要請されれば、それを憲法違反として日本政府は拒否できるだろうか。悩ましい問題ではあるが、今後こうした憲法九条の想定外の国際紛争が頻発するだろう。(おわり)
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