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2014-10-14 00:00
自民幹部は政局観欠乏症か
杉浦 正章
政治評論家
「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」と述べたとされるのが、享保期の勘定奉行・神尾春央。こんな言葉を吐く者はさぞや短命かと思いきや、将軍吉宗の覚えめでたく、当時としては長命の66歳まで生きている。ところがそうは問屋が卸さないのが消費増税。推進派執行部は「平成の百姓」は一度は増税を許しても、2度は絶対に許さないと思うべしだ。一揆を起こすのだ。安倍に再増税を断行させれば、今度こそは過去の導入首相や導入挫折首相と同じコースを辿るだろう。最初に導入した竹下は、支持率が増税率と同じ3%まで下がって、半年後に政権を手放した。橋本も人気が悪いのに輪をかけた支持率低下で、1年で辞任。挫折派は一般消費税の大平正芳、売上税の中曽根康弘、国民福祉税の細川護煕、消費税の菅直人と、いずれもやるまえにあきらめた。こうした過去を知ってか知らずか、自民党幹部が、副総裁・高村正彦にせよ、幹事長・谷垣禎一にせよ、総務会長・二階俊博にせよ、がん首並べて再増税推進論をぶっている。本来なら安倍が増税しようとすれば「殿ご乱心」と羽交い締めで止めなけばならないのに、けしかけている。
その理由たるや「法律がある」からだそうだ。どこか抜けてはいませんかと言いたい。3人そろってでくの坊に見えてきた。法律があるのは当たり前であり、党幹部たるものは、まず現実の政局の読みが先行すべきではないのか。その政局を50年にわたって見てくると、政局というのは、一見国会議員が動かすように見えるが、その実は、国民の「気」が動かすような気がする。「気」とは広辞苑によれば「生命・意識・心などの状態や働き」とある。今度再増税した場合こそ、この「気」が動き出すに違いない。春に8%への増税となったが、物価が3%も上がって国民負担は実質10%を越える。これに加えて電気料金や保険料が上がり、年金は下がり、車しか交通手段のない地方はガソリン価格の高騰で息も絶え絶えだ。冬は灯油価格の上昇が追い打ちをかける。まさに事態は「胡麻の油と百姓」の「苛政」に到らんとしているのだ。増税すれば怨嗟の声はちまたにあふれ、「気」となって国をおおう。自民党執行部は平成の神尾春央たらんとしているのだが、その結果、どうなるかと言えば、政権交代の総仕上げと位置づける来春の統一地方選挙を直撃する。国民はまず地方選挙で一揆のむしろ旗を揚げる。そして次ぎに来る総選挙でとどめを刺すのだ。執行部は3年3か月の野党暮らしのつらさを早くも忘れ、政局は天から降ってくる恵みであると勘違いし始めているのだ。選挙あっての政権であり、政権あっての消費再増税であることは忘却の彼方だ。
政権を維持するための政局観を執行部に教えるとすれば、まず日程だ。今年末に決断し2015年10月1日に消費税を10%にすれば、これに先立つ来春の統一地方選挙は大敗、集団的自衛権問題がこじれて通常国会末の解散断行となればこれも敗退。引き上げにぶつかる秋の臨時国会の解散などとても出来ない。百姓一揆は2016年まで続いて、同年夏の衆参ダブル選挙をやっても敗北ということになるのだ。要するに、政局運営のカギとなる解散・総選挙のチャンスの選択肢がゼロとなるのだ。これを避けるためには再増税を1年半以上延期するしかない。1年半の延期とは2017年の春までの延期ということになり、この間に安倍は政局のフリーハンドを握り、アベノミクスを立てなおし、安倍主導のもとで総選挙の時期を選択できるのだ。こうした中で、さすがに自民党の中から“党内一揆”のむしろ旗が振られる見通しとなった。アベノミクスの産みの親自民党の山本幸三が会長を務める議員連盟「デフレ・円高解消を確実にする会」が10月22日に会合を開く。山本は1年半の見送りを主張しており、議連を党内の増税慎重派の牙城にする構えだ。同日はやはり1年半延期論の内閣官房参与・本田悦朗から見解を聞く。山本は、会合への出席を呼びかける文書で、「円安で期待された輸出がそれほど伸びず、消費も、消費増税の反動減だけでは説明できない低迷が続いている」と延期論だ。個人的に自民議員と話すと増税延期派の方が多い気がする。
消費再増税に関しては、米国からも慎重論が強まっている。ニューヨークタイムズが社説で慎重論を説いている。加えて何と米財務長官・ジェイコブ・ルーが10日国際通貨基金(IMF)の諮問機関である国際通貨金融委員会(IMFC)が開かれるのを前に声明を発表し、日本経済について今年と来年は弱い状態が続く」と指摘し、「財政再建のペースを慎重に調整し、成長を促す構造改革を実行する必要がある」と主張した。あきらかに再増税延期論である。党執行部は「国と地方の基礎的財政収支を2020年度に黒字化出来なくなる」と公約違反を主張するが、これは簡単だ。「22年度から黒字化する」と目標を変えればすむことだ。消費増税で不況が到来して、消費と税収が伸びず、デフレに逆戻りしては、元も子もないのだ。日本売りを狙うハゲタカファンドへの種々の対策も事前に用意して誘導を図れば良い。ハゲタカと政府の知恵比べだ。要するに、党執行部は「政権なくして、再増税などあり得ない」という政局の根本を見定めるべきだ。それとも安倍を短期で終わらそうとする“深慮遠謀”なら話は別になるが、どうか。折から維新の党共同代表の橋下徹は12日、消費税率の10%への引き上げについて、「今の段階では反対だ。止める法案を出す」と明言した。自民党にとってこれは渡りに船に他ならない。水面下でもよい。野党と調整に入るべきだ。
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