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2014-10-10 00:00
アフガニスタン復興の現実
川上 高司
拓殖大学教授
アフガニスタンの米軍は、今年の12月末には撤退する予定である。それに合わせてISAFも撤退しつつある。アフガニスタンの再建のために、アメリカや国際社会が力を入れてきた復興事業はアフガニスタンの人々に何をもたらしたのだろうか。首都カブールの近郊の街を始点として、中部のバーミヤンまで舗装された高速道路の建設が予定されている。これは、2002年イタリアがアフガニスタン政府の要請を受けて建設にとりかかった夢の道路だった。当時アフガニスタンには、舗装された道路は全国で100キロほどしかなかった。新しく建設される道路は全長134キロ、バーミヤンは石窟の仏像が世界的に有名で、道路ができれば多くの観光客が訪れ貧困地域である地元が経済的な恩恵を受けると高く期待された。また、タリバン支配を打倒して国家創造に浮かれていた欧米の復興事業の象徴となるはずだった。
建設は2006年からスタートし、第1期54キロの建設は中国が請け負った。完成したのは2011年、実に5年もの歳月がかかった。カブールからバーミヤンへの道が通るのは、タリバンが支配している貧困村落が点在する地域だった。タリバンからの攻撃、誘拐などあらゆる危険との闘いの中での作業は難航し中断を余儀なくされた。中国は任務を終えると建機を置いて一目散に撤退し二度と戻ってこなかった。第2期の86キロまではアフガン企業、86キロから終点までの134キロはイラン企業が請け負った。 途中には標高3700メートルの峠があり冬の積雪は8メートルにもなる最大の難所となっている。だが、予算がないのでトンネルは掘れない。結局冬期は閉鎖するしかない。
そもそも道路が舗装され完成しているのは始点から54キロまでで、残りは土埃の舞う道となっている。そして工事が終点にたどり着く前に先に完成した部分の舗装がすでに修繕が必要となっているものの、修繕は予算上不可能となっている。イタリアは、当初の予算以上は1銭も出す気がないため夢の道路は永遠に完成しない。その上相変わらずタリバンの攻撃が盛んなため、地元でも「なにがあっても使わない」というデス・ロード、「死の道路」と呼ばれて敬遠されている。
それでも終点のバーミヤンでは、リゾート地としての準備が進んでいる。スキーやスノーボードの用具が、ニュージーランドやオーストリア、スイスなどから寄付を受けて山積みになっている。確かにバーミヤン地域自体は比較的治安がよい穏やかな地域である。山もありウインタースポーツには最適だ。だが、そこに行くのは命がけである。「10年後にはきっともっと気楽に来られるようになっているさ」と地元のビジネスマンは楽観的だが、あきらめにも似ている。撤退ムードに包まれた欧米はアフガニスタンへの関心を急速に失いつつあり復興事業もこのまま先細りは否めない。アフガニスタンは世界から忘れられつつある。この「死の道路」は、欧米諸国に振り回されたアフガニスタンを象徴している。
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