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2014-10-06 00:00
国内と海外の対日評価ギャップと株価
田村 秀男
ジャーナリスト
9月21日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では麻生太郎財務相や黒田東彦日銀総裁が米国などから厳しく景気てこ入れを迫られる始末だった。麻生、黒田両氏とも景気回復については楽観論に終始し、来年10月からの消費税再増税を「国際公約」する手はずだったようだが、それどころではなかった。実はこうした国内と海外の日本経済に対する見方のギャップは株価に表れている。日経平均株価は円安の追い風を受けて1万6000円台を付けているのに、なぜ、と思われる読者もいるだろうが、異変が起きている。ドル建てでみた株価は下落基調にあるからだ。
主要国・地域の株価をドル建てと現地通貨建ての2つの指数で表示する「MSCI」株価指数の日本編と円の対ドル相場の推移を見ると、円建て株価指数は円安基調と並行してじりじりと上昇し、7月初めに比べた9月19日時点の株価は4・4%上昇したが、ドル建てでみると逆に3%近く下回っている。円安の度合に比べ、円建て株価の上昇幅が少ないからだが、円建て指数とドル建て指数は日銀による異次元緩和が2013年4月4日に打ち出されて以来、ほぼ重なるようにして変動してきた。それが、今年8月中旬あたりから、かい離し始め、現在に至る。
きっかけは、8月13日発表の4~6月期国内総生産(GDP)第1次速報値のようである。同期の実質経済成長率は、消費税増税前の駆け込み需要の反動減が「想定外」の大きさで、年率換算でマイナス6・8%となった。9月8日発表の第2次速報ではマイナス7・1%に下方修正された。7月以降の家計消費などの景気指標は停滞しており先行きは厳しい。株価に話を戻すと、気掛かりなのは、「外国人投資家」の動向だ。通常、日本株の売買の6、7割はニューヨーク・ウォール街を本拠にする投資ファンドなど外国人投資家が占める。これら投資ファンドは、日本株など海外株と米国株をドル建てで計算し、保有シェアをしばらく固定して資産を運用する。
円安に振れると、日本株のドル換算価値が下がる。すると、投資ファンドの自動売買プログラムは日本株の保有シェアを引き上げるよう日本株を買い増す。その結果、円安=日本株高の構図となる。それが、アベノミクスがもたらしてきた円安が株高につながった最大の要因だが、そのトレンドは消えた。海外の多くの投資ファンドが資産構成に占める日本株のシェアを引き下げている可能性もある。米株価にも日本株価は影響されるが、米市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ懸念などで一進一退だ。アベノミクスの有効性への国内外の信頼は、株高によってかろうじて保たれている。政府が景気動向を無視して、先行き楽観主義を押し通し、消費税再増税を強行するようだと、最後の頼みの株価も失速しかねない。
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