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2014-10-01 00:00
税収を減らす消費税増税について感じたこと
田村 秀男
ジャーナリスト
来年10月から消費税率を予定通り10%に引き上げるべきかどうか、議論が始まった。「さすがにこの人だけはよくわかっているな」と思わせたのが、安倍晋三首相の14日のNHK番組での「経済がガクッと腰折れしたら思惑通りに税収は上がらない」との見解である。首相に比べ、与党幹部がこぞって財務官僚の描くシナリオをなぞらえている姿は何とも不可解だ。消費税増税しても、国の一般会計税収総額は増えるどころか、「ガクッと」減ってきた。首相発言を裏付ける材料として、1997年度の消費税増税以降、増税前の96年度と比べて税収がどうなったかを見てみると、所得税収と法人税収は大きく落ち込み、その減収分が消費税増収分をはるかに超えて財政が悪化し、現在に至ることがわかる。全体の税収が増えたのは97年度だけだが、同年度でも消費税以外の税収は減っている。98年度からはデフレ局面に入り、消費税を含む全体の税収は96年度を下回り続けている。
昨年の消費税率の8%引き上げ最終決定時にも「消費税増税で財政収支は好転しない」と指摘してきたが、今回安倍首相がその点に気付いてくれたようで、心強い。消費税率を引き上げた結果、慢性的なデフレ不況に陥ってしまったために、財政収支が悪化の一途をたどってきたが、今回もその誤りを繰り返しかねない。仮に安倍首相が来年の10%への税率引き上げを見送る決断をしたとしても、すでに今年4月からの増税に伴って、4~6月期の家計実質消費は戦後最大級の落ち込みを示している。
五月雨式に発表される7、8月の消費関連のデータをみても5、6月を下回るありさまで、政府、民間エコノミスト多数が主張してきた7月からの「V字型回復」なぞ幻想に近いことは否定しがたい事実だ。楽観論ばかり報じてきた日経新聞もさすがにまずいと思ったのか、最近では景気への警戒論を繰り返し報じるようになった。企業在庫は増える基調にあり、雇用や設備投資の下方修正に向かえば、まさに97年度増税の繰り返しだ。そうなると、脱デフレどころではなくなり、税収の伸びは鈍化し、2015年度は14年度を下回る恐れすら出てくる。安倍首相発言はまさにこのポイントを衝(つ)いている。
首相が極めてまともな見識を示しているというのに、冒頭に挙げたように、自民党の谷垣禎一幹事長は、公明党の山口那津男代表、民主党の野田佳彦元首相という、消費税率引き上げを決めた「3党合意」当時の党首と12日夜に都内で会合し、来年10月の消費税率10%への引き上げを再確認する始末だ。麻生太郎財務相兼副総理、二階俊博総務会長も増税派だ。首相は消費税増税に関してはいわば「四面楚歌」にさらされている感があるが、その正論を、卓越した指導力により押し通してもらいたいものだ。
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