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2014-09-19 00:00
人民元膨張に事なかれ主義の財務官僚
田村 秀男
ジャーナリスト
3年ほど前の話だが、「米国債は安全ですか?」と聞かれたグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)は、「安全です。合衆国はいくらでも債務を支払えます。なぜならわれわれは、そうするために常にドルを刷れますから」と答えたという。お札を刷れば借金だって払えるし、石油でも何でも買えるのは、通貨覇権国米国の特権である。中国はその米国を手本にして人民元の国際化を進めている。かつては「円の国際化」をさんざん議論しておきながら、何の成果も得られなかった日本とは大違いである。
2013年、中国の対外貿易での人民元による決済額は、日本のそれの円による決済額を初めて上回った。人民元は7,080億ドルで前年比57%増、円は16%減である。今年は人民元決済が加速し、年前半の実績値から推計すると、円建て決済の倍近くに膨れあがる勢いだ。日中とも自国通貨建て貿易は東アジアが主であり、東アジア圏で円は人民元によって駆逐されつつある。人民元によるビジネス取引を増やしている国や地域は、人民元を手元に持たなければ払えず、中国との貿易にますますのめり込むようになるので、政治的立場に影響する。中国の海洋進出を東南アジア諸国連合(ASEAN)各国が警戒しても、その足元では経済の対中依存が高まっており、結束して毅然として中国に対峙できるはずがない。
習近平国家主席は、米国に対抗して積極的な通貨攻勢をかけている。一つは、日米主導のアジア開発銀行に対抗する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」で、中国主導でアジア各国のインフラ建設を支援するという。もう一つは、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)共同出資による発展途上国向けの新開発銀行で、本部を上海に置く。新興国・途上国の外貨準備合計の約5割のシェアを持つ中国は、それを見せ金にして、人民元建てによる投融資を一挙に拡大して、ドルに挑戦する構えだ。
それに対して、日本の財務省官僚には全くと言ってよいほど、危機感がない。財務省国際局で「円の国際化」に取り組んだはずの中尾武彦アジア開発銀行総裁は「AIIBを創設するなら立派なものを作ってほしい」と中国にエールを送らんばかりだ。国益や国家戦略というものが念頭にないこの姿勢は、消費税増税を安倍晋三首相に呑ませて、アベノミクスと日本経済を窮地に陥れても何ら痛痒(つうよう)を感じない財務省主流派官僚の考え方と変わらない。本来、安倍首相はアベノミクスによって「強い日本」を取り戻し、膨張する中国と対峙する戦略を原点に据えていたはずだ。それが、官僚のいいなりになったために足下が崩れた。内閣改造も結構だが、安倍政権は官僚依存から完全に脱却するのが先決ではないか。
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