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2014-09-10 00:00
習近平が廃棄した「韜光養晦・有所作為」
田村 秀男
ジャーナリスト
中国の対外攻勢は執拗(しつよう)で傍若無人、横暴きわまりない。米軍偵察機に中国軍戦闘機が異常接近し、挑発行動を繰り返す。米軍が圧倒的に技術優位なはずの「サイバー戦」でも、盛んに無差別攻撃を仕掛ける。8月中旬には、米国最大級の病院グループが、中国からハッカー攻撃を受け、約450万人分の患者の個人情報が盗まれた。他方で、オバマ政権からの警告を無視して衛星破壊のための実験を繰り返す。中国の独占禁止法違反を理由にした、進出企業バッシングの対象は、日米欧企業のべつまくなしだ。米マイクロソフト、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、日本の自動車部品大手12社を罰し、さらにトヨタ自動車も調査対象にされているという。
VWといえば、日本のパナソニック同様、最高実力者、鄧小平氏が健在な頃、いち早く中国に進出し、「井戸を掘った」企業と目されていた。独禁法うんぬんと言うなら、独占企業だらけの自国の国有企業や党指令下にある企業をまず問題にするのが国際常識なのに、悪いのは外国企業ばかりと決めつける。これらの粗暴な振る舞いは習近平国家主席の路線に基づいている。「ハエもトラも叩く」という汚職・腐敗取り締まりによって、江沢民元主席派の周永康元党中央常務委員ら「上海閥」を掃討しているのは単なる権力闘争ではない。
習氏は、当時の最高実力者、鄧小平氏が敷き、上海閥が継承した「韜光養晦・有所作為(とうこうようかい・ゆうしょさくい)」という対外基本路線を全面放棄した。この8文字は、自分の能力を隠す一方で力を蓄えつつ、取るべきものを最低限取っていくという意だが、今後は力をむき出しにして取れるべきものを最大限取っていく路線に転じた。筆者が最近入手した、江沢民氏の子息が江派の軍長老に打ち明けた秘話を紹介しよう。習氏を2012年、党と軍のナンバーワンの座に据えた江氏は「中国の実力はいまだに米国にはるか及ばない」とし、「韜光養晦・有所作為」原則を胡錦濤前主席に続いて習氏も踏襲するよう求めたが、習氏はこれに対し、「今やわれわれの力で米国に十分対抗できるし、へりくだるのは無用」と譲らず、2人の関係は断絶した。
習氏は今年から本格的に対米柔軟派の上海閥締め出しに動き、軍上層部を強硬派で固める人事を着々と進めている。言うまでもない。上海閥の不正行為の摘発は、その目的達成の手段でもある。投資主導で突っ走ってきた中国経済だが、不動産開発投資がバブル不安のために失速する一方、鉄鋼、自動車、家電など国産メーカーは生産過剰に苦しんでいる。そこで党官僚は軍の対外強硬路線に倣って経済でも排外主義に走りだしたと見るべきだろう。日本財界では「政冷経熱」期待が根強いし、政府のほうでは「中国を国際的な自由貿易の枠組みに取り込む」とのたまう官僚氏も多いが、北京はせせら笑っているだろうに。
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