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2014-08-28 00:00
「地方創生」は空き家を多く活用することからはじめよ
田村 秀男
ジャーナリスト
お盆休みの帰郷やご先祖への墓参りは、地方出身者にとって欠かせない。高知県の山間部で育った筆者もそうだ。帰るたびに、竹馬の友や縁者から「こちらにはだれも住んでいない田舎家がいっぱいあり、タダで譲り受けられるし、改装したら快適に住めるよ」と勧められる。なるほど「いざ、帰りなん」ということも、と思い、探訪してみる。空き家は山あいの集落に点在しており、周りには人気(ひとけ)というものをまるで感じない。立派なつくりの知り合いの旧家も目に入ったが、これも無人。
そこに移り住んだとしよう。足は、となると自分で車を転がして狭く曲がりくねった町道を走らせて片道30分、国道沿いのスーパーまで往復しなければならない。と考え込みながらいくつ目かのカーブでハンドルを切ると、レンタカーの脇腹がガリッ。ひしゃげたガードレールの突起部分に気付かなかったのだ。たちまち、戦意喪失。大都会に住み慣れてしまったこの身には厳しすぎる、思い知らされてしまった。ちなみに、総務省の「2013年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は過去最多の820万戸(マンションなどの共同住宅の一室も含む)で、空き家率は過去最高の13・5%に増えた。都道府県別で空き家率が最も高かったのは山梨県(17・2%)で、愛媛(16・9%)、高知(16・8%)と続く。高知県は最悪水準である。
価格が一定水準まで下がれば買い手がつくのが市場原理というものだが、住居としての価値は十分あるはずなのに市場価格がつかない。半面で、ふもとの平野部の町の中心部の利便性はよく、空き家はほとんどないし、地価は低位安定している。こうした各地の住宅価格を一括して調べ、国土交通省は「住宅価格指数」を最近試験的に算出し始めた。住宅価格指数の全国平均と東京都を対比してみると、「アベノミクス」が始まった2013年1月以降、指数が上がっているのは東京都だけで、全国値は長期化する資産デフレのトレンドから抜け出せない。関西、中部の大都市圏も全国の動向と傾向は同じで、東京の「独り勝ち」である。
その背後には、値のつかない空き家が全国いたるところにあるのに、東京では狭苦しくて価格が高い住居がひしめいているはずだ。もちろん、東京にも空き家は散見するが、市場価値が十分ある点で地方とは異なる。東京から、より安く広く住める地方に人口移動が起きるというのが、市場原理というものである。各地域や集落に人が住めるようにする国と地方自治体の政策があってこそ、市場原理が機能する。人、特に現役世代がいない自治体は存続しえない。山も川も荒れ、「美しい日本」はずたずたにされ、荒廃するだろう。安倍晋三首相は遅ればせながら、「地方創生」を言い出したが、地方の空き家を一つでも多く活用する策を打ち出すべきではないか。
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