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2014-08-25 00:00
ミャンマー政府と少数民族の和解交渉進展への期待
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
ミャンマーは、2011年に軍政からテイン・セイン大統領による文民政権に移行して以来、民主化が進展し、欧米による制裁が解除され、今年はASEANの議長国を務めており、今や国際社会の一員として完全な復帰を遂げたと言ってよい。しかし、ミャンマーの民主化と安定化には、まだ大きな課題が残っている。その一つは、政府とカレン族やカチン族などの少数民族との和解である。この点について、最近、期待できる大きな進展が見られた。すなわち、断続的に進められているミャンマー政府と少数民族勢力代表の停戦交渉において、政府側が、自治権を認める連邦制導入を受け入れたと、報じられている。自治権を認める連邦制導入というのは、少数民族側の一貫した主張であり、政府側が譲歩したことにより、停戦合意の機運が大きく高まったと言える。
ミャンマーの少数民族問題は、独立以来60年以上も続いている問題であり、少数民族による武装組織の反乱があるために軍の力を強くせざるを得ず、それが軍事政権に繋がった背景の一つでもある。したがって、今回、連邦制導入では合意したものの、少数民族の武装をどうするかという重要な課題が、停戦合意後に先送りされたのは不安要因ではある。政府と少数民族の間で交渉を重ねるうちに、信頼関係が醸成されつつあるように見受けられ、仮に両者の見解に相違が生じたとしても、深刻な衝突が直ちに起こる可能性は低いと思われるが、早期の完全な和解が望ましいのは当然である。
ミャンマーから産出が見込まれる天然資源の多くは、少数民族の居住地域に賦存すると見られており、そういう観点からも、政府と少数民族の和解を一層サポートする必要がある。わが国は、ミャンマーの和平と安定の基礎作りに貢献すべく、少数民族に対してODAや日本財団を通じた援助などを行っている。ミャンマーにおける法制度の整備、運用を支援するための人材育成も行っている。こうした努力は、着実に続けられるであろうし、そうしなければならない。
なお、ミャンマーの民族問題には、イスラム教徒のロヒンギャへの迫害という重大な問題があるが、これは、カレン族やカチン族などの問題とは根本的に異なる。ミャンマーとバングラディシュの国境地帯に居住するロヒンギャは、そもそも、ミャンマー国民として認められていない。これは、ミャンマーの概ね総意であると言ってよく、アウンサン・スーチー女史さえも、この点では同じ立場をとっている。そして、ロヒンギャは、周辺各国から難民認定されず、受け入れが拒否されている。ロヒンギャの問題は、国際的に取り組むべきものであり、ミャンマーだけを非難して解決する性質のものではない。
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