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2014-08-22 00:00
消費税増税は財政悪化の元凶
田村 秀男
ジャーナリスト
消費税増税後の景気動向について、政府と日銀が楽観論を盛んに流しているが、内部では「本当に大丈夫だろうか」という声がある。大本営発表同然の「公式発言」もニュアンスは微妙に変化している。例えば、日銀政策委員会の石田浩二審議委員は7月29日の講演で、景気の現状は底堅いと言いつつ、「実質賃金の減少か消費全体にじわじわと影響してくる可能性もある」と、慎重な言い回しながら政府、日銀を通じて初めて慎重な見方をにじませた。日銀幹部の公式発言は、事前に日銀内で検閲を受けなければならない。増税によるデフレ圧力をはるか前から指摘してきた筆者にとってみれば「何を今更」と冷やかしたくなるが、日銀として楽観論一点張りではヤバイと心配し始めたのだろう。
一方、筆者が信頼を置く数少ない民間エコノミストの一人である片岡剛士・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員は7月17日付のリポートで、消費税増税後の景気回復過程は「L字型」を示唆すると指摘した。景気用語でL字型というのは、V字型と並んでよく使われる。字形通り需要は4~6月期に急激に落ち込んだあと停滞局面に入り、前年の水準を下回ったままで、2015年以降も低迷が続く。1997年増税の場合は98年以降の慢性デフレを招いてしまったのだが、今回もその二の舞に陥る恐れがある。そうなると「増税で財政再建」どころか、「増税で財政悪化」の泥沼にはまる。
増税前の96年度と比べて税収がどうなったかを見ると、所得税収と法人税収は大きく落ち込み、その減収分が消費税増収分をはるかに超えて財政が悪化し、現在に至る。全体の税収が増えたのは97年度だけだが、同年度でも消費税以外の税収は減っている。98年度からはデフレ局面に入り、消費税を含む全体の税収は96年度を下回り続けている。財政赤字を理由に、財務官僚は次なる消費税増税を仕掛け、野田佳彦民主党政権(当時)を丸め込んで、自民、公明の両党を巻き込んだ「3党合意」を成立させて、14年4月から8%、15年10月から10%への増税路線を敷いた。97年増税による惨憺たる結果を無視したわけである。
14年度は財務官僚が仕組んだ予算ベースで消費税収は大幅に伸びるが、所得税と法人税収入はアベノミクス効果が表れた13年度実績を下回る。97年増税がそうだったように、増税によるデフレ効果が税収減となって本格的に表れるのは増税実施の翌年度からである。財務省はその愚を繰り返すうえに、再増税を安倍晋三首相に迫っている。首相は失敗の責任を絶対にとらない官僚の意のままになるのか、それとも、97年増税の失敗の教訓を生かして、官僚からの圧力をはねのけられるのか。増税は財政悪化の元凶というまぎれもない事実を、首相はまず認識して、財務官僚と対峙するべきではないか。
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