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2014-07-18 00:00
国際社会の縮図のようなイラクの情勢
川上 高司
拓殖大学教授
シリアの東部からイラク西部にかけての地域を「イスラム国」とするとISISが宣言した。さらにISISのリーダ-をカリフと戴くとして、全イスラム教徒に敬意を払うようにと世界に向かってコメントした。イラクはまさに混沌として先行きが全く見えない。シーア派は最高指導者のシスターニ師のジハードの呼びかけに結集し、ISISとの衝突に備えているという。かつて米軍にとって強敵であったバグダッド南部のマハディ軍も再結成されているという。マハディ軍は、シーア派のムクタク・アル・サドル師が率いるシーア派グループの民兵組織で、2003年の米軍の侵攻時には米軍に徹底抗戦し、手強い軍として有名となった。彼らはフセイン時代にシーア派ゆえに抑圧され、サドル師の元で堪え忍んだ日々を送っている。スンニ派との闘いはまさにジハードとなり、一歩も譲らないだろう。
一方北部のクルド人自治区は、やはり強靱な自警組織を持っており、自らの領域をしっかり固めている。おそらくISISがこれ以上つけいる隙はないだろう。 マリキ首相は、このイラクの危機に際して、ロシアから戦闘機とその専門家を呼んで戦闘に備える。プーチン大統領はこれまでイラクの問題にはあまり関与してこなかったが、全面的に支援すると表明した。さらにシリアのアサド政権は6月下旬、ISISのイラク内の支配地域を空爆して、全面的な支援の姿勢とISISに対しては容赦ない態度で臨むことを示した。マリキ首相は当然ながらこのシリアの空爆を歓迎するとコメントしている。
アメリカは、シリアの反政府グループに支援を拡大し、5億ドルの追加支援を行うと表明、シリアの周辺国には10億ドルを拠出すると決定した。アメリカは、ISISに対抗できるのはシリアの反政府グループである、という認識を持っている。単純に見れば、アメリカもアサド政権もISISを殲滅したいという同じ目的を持っていることになる。さらに、シリアやイラクを強力に支援しているイランもまたISISを叩きたいと考えている。
ISISの問題は、アサド大統領やマリキ首相を追放して別の指導者を立てて解決するほど単純な問題ではなくなってきている。周辺国だけでなくロシアやアメリカがそれぞれの思惑にしたがってプレイヤーとなり、まさに国際社会の縮図のようである。この危機に、世界の警察官から降りたアメリカはどう振る舞うのか。イラクへの派兵には国民の74%が反対している。中間選挙を控えてオバマ政権の外交政策が注目されている。
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