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2014-07-10 00:00
集団的自衛権行使はなぜ必要か?
矢野 義昭
拓殖大学客員教授
冷戦期には、米中の力関係は米国が圧倒的に優勢であった。戦略核戦力の面では、中国が米本土を直接攻撃できるのは20基余りの固定式サイロに配備された大陸間弾道ミサイルだけであった。その頃の米中の戦力比較では、万一米中間で戦略核攻撃の応酬がされても、米国が一方的に勝利するものと評価されていた。しかし、その様相は今では一変している。1990年代以降、中国は戦略核戦力の近代化に一貫して力を入れてきた。その結果、ミサイルの射程や精度が向上しただけではなく、車両に載せて移動化し、新型弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦を本格配備するなど、核攻撃の最初の応酬から生き延びて、米本土に報復攻撃を加えられる戦略核報復力が大幅に向上している。
今では、万一米中間で戦略核の応酬がなされた場合、中国側の損害約2,600万人に対し、米国側の損害は4千万人から5千万人に上ると見積もられている。米国の大統領としては、中国との核戦争を招くおそれのある意思決定には躊躇せざるをえなくなるであろう。そのうえ、中国本土には、核・非核弾頭の各種ミサイル500発から600発程度が配備され、その射程範囲は中国沿岸から約1千海里に及び、その中には米空母も簡単には入れない状況になっている。日本列島もその射程内に入っている。
他方米国は、今後10年間に計約1兆ドルに上る国防費削減が不可避となり、同盟国への大規模な地上兵力の派遣はできなくなっている。いま米国で検討されている「統合海空戦闘概念」でも、「オフショアコントロール戦略」でも、中国との核戦争と大規模地上兵力の派遣を回避することが前提になっている。米国の核の傘の信頼性は大幅に低下し、米国は、同盟国に対する地上戦力による即時の大規模支援ができなくなっている。日本も一定期間は独力で自らを守らねばならない。
集団的自衛権は、弱者にこそ必要な戦略である。日本はいまや、強力な庇護者を失った弱者である。そうであれば、集団的自衛権行使を自ら認め、米国はもちろん他の友好国の支援も日本の危機時に得られるような方策をとり、力のバランスを日本に有利にしておくのが合理的安全保障政策である。力のバランスが崩れれば侵略はいつでも起こりうる。憲法改正が前提との主張は、必要な準備を遅延させ、日本を弱体のままにさらし、侵略者を利する結果を招くであろう。
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