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2014-07-07 00:00
オバマ政権は、今こそイランとの宥和政策を活かすべき
川上 高司
拓殖大学教授
イラクでのISISの拡大に対して、オバマ政権は275人の派兵を発表した。アメリカ大使館や在留米国人の安全確保のためだと説明しているが、いつも最初の1歩は小さい。折しもウイーンでは、イランとアメリカのバーンズ国務副長官が核問題をめぐって2国間協議を開催していた。当然ながらイラク問題が話題に上ったが、両国は軍事的な協力はしないという結論で一致した。だからといって外交や政治の面で協力しないということではないだろう。
イラクでのイランの影響力は大きい。イランにとってみれば、ISISがバグダッドを制圧しイラクを支配することは、この地域におけるシーア派全体の存亡に関わる問題なのである。レバノンのヒズボラからシリア、イラク、イランと繋がるシーア派回廊に住むシーア派全体がISISの脅威にさらされている、イランこそが彼らを守らねばならないというのがイランの立場である。
イラン革命防衛隊の司令官はすでにバグダッドに入っており、きたるべき闘争に備えて士気は高い。このいち早く駆けつけるという姿勢こそがイラクのシーア派、とりわけマリキ首相の信頼を裏切らないという証左であり、シリアやヒズボラ、バーレーンのシーア派など各地のシーア派にとっても信頼できる同胞としてイランの存在感は高まるばかりである。
皮肉にもスンニ派の影響力を高めようとしているISISの進撃は、中東地域のシーア派を結束させることになってしまっている。バグダッドでISISとイランのシーア派部隊が衝突すれば、両者とも宗派をかけた闘いであるゆえに、始まってしまったらもはや誰にも止められない闘争となる可能性は高い。イランの協力なしにイラク問題は解決しないのである。昨年9月以来積み重ねてきたイランとの宥和政策を今こそ最大限に活かすべきである。
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