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2014-07-01 00:00
20世紀のもう一人の重要エコノミスト
近藤 健彦
麗澤大学オープンカレッジ講師
パリ市内に「リュエフ広場」という広場がある。20世紀フランスの生んだもう一人の重要エコノミストであるジャック・リュエフ(1896-1978)に因んで命名された広場である。しかし、リュエフについては、一般には必ずしも「20世紀フランスの生んだもう一人の重要エコノミスト」という評価にはなっていない。
あるとき、1985年のプラザ合意G5会合でご一緒した澄田日銀総裁に私が質問をした。「ジャン・モネとジャック・リュエフではどちらが偉かったでしょうか?」。総裁のお答えはこうだった。「それは君、ジャン・モネだよ」。ちなみに総裁は大蔵省のフレンチ・スクールの会の会長だった。ジャン・モネのことを褒めておられた。ジャン・モネは人も知る欧州統合の父である。総裁はフランス語がお得意で、日銀総裁のときはBISの中銀総裁会合での発言はフランス語だった。澄田総裁のフランス語発言をドラロジエール当時フランス中銀総裁がみんなのために英語通訳した。この話はドラロジエールから聞いたので間違いない。
リュエフの認知度が低いのは、彼の落ち度だったと私は思う。彼の金本位論が元凶である。彼は経済の節度を守るのに、金本位制度という「有史以前からの説」に依拠した。それにドゴールが飛びついた。しかし私のみるところ、彼の本領は「経済には節度が必要だ」として、返せないような財政赤字を「虚権利(faux droit)」と呼び、これを断固拒否したことである。彼自身が著作の中で書いているように、返済不能な巨額の借金は、金準備を使うかどうかの差だけで、いずれにしても中央銀行のバランスシートに反映されざるをえない。
翻って日本を見ると、日本は世界に冠たる借金大国であるが、なお、財政・金融を緩める議論が主流である。基本的に人口が大幅に減る国で高い経済成長が可能だろうか?早晩、税と社会保障を改めて抜本的に見直さざるをえないだろう。
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