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2014-06-18 00:00
(連載1)集団的自衛権行使容認反対論の敗北
加藤 朗
桜美林大学教授
安倍内閣は、集団的自衛権の行使を認める閣議決定に向け、いよいよラストスパートに入ったようだ。反対派はメディアやシンポ、集会、デモなどいろいろな手段を使って何とか閣議決定を阻止すべく全力を挙げている。しかし、もはや敗北感漂う状況に追い込まれている。今は、ただ「反対」の声を挙げるだけで、事実上、集団的自衛権の行使容認阻止はあきらめたようだ。なぜ反対派は負けたのか。集団的自衛権行使容認反対派の反対論は、以下の4点にまとめることができるだろう。
1.解釈改憲に反対。したがって、憲法改定でその是非を国民に問うべきだ。慶応大学の小林節教授はじめいわゆる改憲派も含めた大方の反対派の主張である。解釈改憲反対論は解釈改憲という手続きに対する反対論であり、集団的自衛権の行使そのものに反対しているわけではない。むしろ集団的自衛権の行使を容認している者も多い。仮に容認していない人であっても、憲法改定で国民が改定に賛成すれば、集団的自衛権の行使を容認せざるを得ない。その意味で、解釈改憲反対論は手続き論への反論であって集団的自衛権の行使そのものへの反論にはなっていない。
2.個別的自衛権で対処可能。公明党の主張である。確かに、内閣や安保法制懇が挙げた集団的自衛権の行使が必要となる個々の具体的な事例の多くは、前提が荒唐無稽で、非現実的であったり、そうでなければ個別的自衛権や周辺事態法で十分に対処できる事例ばかりである。
とはいえ、今回内閣が挙げた事例に反論できたとしても、将来もすべて個別的自衛権で対処可能ということにはならない。たとえば、安倍首相は今のところ直接言及していないが、中国の海洋進出を巡る東南アジア諸国との防衛協力の事例である。その時は集団的自衛権を認めるのか、あるいは個別的自衛権の範囲でしか自衛隊は行動しないのか。もし前者であれば、「将来に備えて、今集団的自衛権を認めるべきだ」という安倍内閣の主張と変わりはない。またもし後者であれば、それは「個別的自衛権で対処可能」という議論ではなく、「自衛隊は個別的自衛権の範囲内でしか行動すべきではない」、つまり「専守防衛」を改めて主張すべきだ、ということになるであろう。この反対論は、公明党としては、与党にとどまる一方、創価学会の主張にも配慮したぎりぎりの妥協案である。しかし、それは単に問題の解決を先送りし、与党残留を狙った党利党略レベルの議論でしかない。(つづく)
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