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2014-06-12 00:00
(連載1)物価の上昇がデフレからの脱出とは限らない
田村 秀男
ジャーナリスト
民主党の菅直人政権時代の2011年6月、消費税増税案を作成した与謝野馨経済財政担当相(当時)と会ったとき、筆者が「デフレ下での消費税増税は避けるべきではないか」と反対論をぶったとき、与謝野氏の脇にいた官僚氏が傲慢にも口をはさみ、「消費増税すると物価が上がりますからね」とニタッと笑った。そんな経済に無知な官僚が裏で増税案をとりまとめ、メディアを操縦し、政治家たちを篭絡し、国民の運命を狂わせてきた。
「無知」と言ったのは、「物価上昇=脱デフレ」という短絡的な思考のことである。1930年代のデフレ恐慌時代に『雇用・利子および貨幣の一般理論』を著したJ・M・ケインズはデフレについて、「物価下落が続くという予想が広がっていること」と定義したばかりでなく、「(デフレは)労働と企業にとって貧困化を意味する。したがって、雇用にとっては災厄になる」と考察している。つまり、デフレかどうかは物価と雇用の両面から判定するべきだと説いている。
米国ではこの見方が定着していて、物価変動率が例えプラスであっても、雇用状況が悪化していれば、政府も連邦準備制度理事会(FRB)もそれを重視する。リーマン・ショック後、FRBは物価上昇率がマイナスからプラスに転じた後も、失業率の改善が思わしくないことから、大量にドル資金を発行しつづける量的緩和政策を続けてきた。
「物価さえ上がれば、デフレからの脱出だ」と思い込んでいるのは、官僚ばかりではない。官僚たちを教えた大学教授たちがそうだ。5月19日付の日本経済新聞の経済教室の寄稿者の某教授氏は「4月18日付『経済教室』で東京大学の渡辺努教授が指摘したように」との前置きに続け、「消費税率の引き上げが価格の硬直性を弱め、デフレ脱却の契機を与えているという解釈も可能かもしれない」と述べている。「価格硬直性」とはコストが変わっても企業は販売価格を改定しない傾向を指す。今回の場合、企業が消費増税の機会を利用して消費税増税分以上に値上げするケースが目立つのを、某教授は学者言葉で硬直性が弱くなったと評価した。(つづく)
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