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2014-06-10 00:00
中国との一触即発の状況に対応する心構え
中山 太郎
団体非常勤職員
6月6、7日の本欄への河村洋氏の投稿「中国はイスラムと衝突するのか」は、益々国際社会でのし上がってきている中国が今後ぶつかるであろう困難の一つを手際よく説明され、興味深いものでした。これから、日本をはじめ世界は否がおうにも中国問題で頭を悩ますこととなる。長年中国の現場でのた打ち回ってきた経験から、最近の尖閣をめぐる一触即発の状況に対応する心構えとして、以下のことを述べたい。
第一に、中国は体制が硬直した国家ということである。日本など西側諸国では、組織の基本方針を変更させる問題ならともかく、殆どの日常の問題は現場の担当者に裁量が任され、ある程度柔軟な対応が可能である。しかし中国では、国家最高権力のトップ(現状では、未だ集団指導であり、内部での権力闘争は終了していない)内での決定まで待つこととなり、問題の前線にいる担当は、金太郎飴的な対応に終始せざるをえない。そうしたトップの決定が、常識的に見て奇妙なタイミングでなされることもある。こうした状況に対して、往々にして考えすぎる日本や西側諸国では、裏に何があるのかと議論が戦わされるなど、少なからぬ混乱をもたらしている。
第二に、日本などの場合、事故発生に際し、その原因をめぐり双方の主張とともに「真実」に近づこうとするものだが、中国の場合はゼロと考えておいたほうが良い。中国では、指導層といえど想像を絶する格差からくる国内の不満、軍からの圧力に振り回される。特に、対日本の場合は歴史問題もあり、絶対に弱みを見せられないのだ。次に、問題の解決には、中国側は、言葉の操作を行なうことが多い。日本に多い完璧主義からみると許せないかもしれないが、それに費やす無駄なエネルギーや時間(当然金も失う。ある場合は、人命も。)を考えると、半分はあきらめざるを得ないことを頭の片隅においておくことだ。戦後の日中関係は、1971年のキッシンジャーの隠密裏の訪中よりはじまった。米は、acknowledgeもrecognizeも中国側が「承認」と解釈することに半ば目をつぶる形で、カーター大統領による国交樹立までたどり着いた。2001年の海南島沖での米中軍用機接触事故においても、米は、「sorry」を中国が米の謝罪と広報することを暗黙裡に認めることで手打ちをした。
最後に、環境問題など中国に多々ある国内問題において、私が読んだ中国の論稿では、先進諸国のハイテクの移入が解決の打ち出の小槌だと問題を簡単に考える向きが多い。しかし、日本の専門家も指摘するように、基本は社会全体の意識改革が必要なのだ。水、空気、大地を汚すもろもろの事態を開かれた自由な形で監視できる「自由と民主」、日本のような気兼ねなく政府批判ができる社会が大事なのだ。そして、物事は、理論どおりには行かない。その場合、進歩と制限とのバランスをどうとるかを考えられる成熟した人々が肝要なのだ。
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