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2014-06-07 00:00
(連載2)中国はイスラムと衝突するのか
河村 洋
外交評論家
トルコのような非石油輸出国も中国の武器輸出の潜在的な市場となる。イスラム復古主義を掲げるエルドアン政権の下では、アフメト・ダウトール外相が、トルコをアフロ・ユーラシア圏の中核へ据えようと、欧米よりもイスラムとアジアへの接近をはかり、ケマル主義から脱却しようとしている。中国は、自国の中東およびユーラシア戦略のために、要石となるような国への影響力を強めようとしている。これは、トルコと欧米同盟諸国との間の中国製ミサイル論争に典型的に表れている。中国精密機械進出口総公司(CPMIEC)は、自社の対空ミサイル・システムの売り込みのために、低価格および技術移転の条件緩和といった好条件を提示している。レッド・チャイナは、レイセオン=ロッキード・マーチン連合やユーロサムといった欧米企業を押しのけんばかりの勢いで、大西洋同盟も崩壊させかねなかった。しかしNATO同盟諸国の圧力によって、トルコは中国とのミサイル取引を白紙に戻した。日本の安倍晋三首相も昨年10月に、レジェップ・エルドアン首相との会談でトルコの中国製ミサイル輸入中止に一役かっている。
しかし米国防大学のデニース・ダー氏によると、ミサイル取引の一件は、中国が新興経済諸国の防衛市場に浸透する能力が恐るべきものだということを示している。そうした「大躍進」にもかかわらず、中国は中東での影響力強化には決定的な弱点がある。最近行なわれた南インド洋でのマレーシア航空の遭難機探索の任務では、中国は水上戦闘艦艇18隻、沿岸警備隊舟艇、民間輸送船、砕氷船から成る大艦隊を派遣した。中国が真の外洋海軍となるには、海外に海軍補給ネットワークが必要なことが明らかになった。中国は今回の任務では、オーストラリアの港湾を使用しているが、インド洋から太平洋にいたるシーレーンの国々のほとんどはアメリカの同盟国である。中国の政治的および経済的プレゼンスが増大すれば現地住民との接触も増加し、そうなると中国人が過激派に攻撃される可能性も高まる。空母「遼寧」に見られるように中国の海軍力は急激に強化されてはいるが、海軍への支援能力が不充分な現状では中東での中国の戦力投射能力は向上しないだろう。
中央アジアは内陸で近隣でもあるので、中国は海軍への支援体制を気にかける必要はない。しかし中国は、すでにアフリカばかりか反欧米の同志ともいうべきロシアの極東地域でも、天然資源の収奪と環境破壊という悪名を博している。イスラム圏との経済的取引が増えれば、中国と現地住民の摩擦もそれに伴って増えてくるだろう。このことは新疆にも影響を及ぼすだろう。非常に興味深いことに世界ウイグル会議のラビヤ・カーディル総裁は、「中国がウイグル人には抑圧的な政策をとりながら、中央アジア近隣諸国の不興をかわぬためにも他のイスラム少数民族にはそうした政策をとらない」と論評している。中国は、いつまで新疆でそうした分割統治を続けられるのだろうか?中央アジア諸国住民との経済摩擦および文化摩擦は、中国の北西部辺境地帯に容易に飛び火する。ウイグル人の抵抗は今年になって強まっている。中国の石油浪費経済は彼の地の紛争を激化させかねない。
中国とイスラムの衝突は、中東と中央アジアにかつてないほどの不確実性をもたらす。従来から中国は、タンザン鉄道への援助に見られるように、自らを西欧帝国主義に立ち向かう途上国のリーダーと位置付けてきた。しかし今日では、中国は欧米と並んで現地過激派の憎悪の標的になる可能性の方が高い。イスラム過激派にとってカフィール(異教徒)はカフィールであり、相手がキリスト教徒であろうと非キリスト教徒であろうと、また白人であろうと非白人であろうと同じであることは銘記すべきである。イスラムとの衝突は、中国と地政戦略上の対抗相手との関係にどのような影響を与えるだろうか?特に日米両国、そしてヨーロッパとの関係がどうなるか注目すべきである。(おわり)
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