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2014-05-28 00:00
ようやく外れた「島崎ブレーキ」
杉浦 正章
政治評論家
ようやく「島崎ブレーキ」が外されることになった。政府は原発の安全審査を進めている原子力規制委員会の委員に、東京大学大学院工学系研究科教授の田中知(さとる)と東北大学東北アジア研究センター教授の石渡明を起用することになった。まるで原発は諸悪の根源のような立場から、再稼働を抑え続けて来た委員長代理・島崎邦彦は、自らの意向もあって再任されないことになった。国家の命運を左右すると言っても過言ではない原発再稼働を一地質学者の判断でストップがかけられる、という規制委の独善的な在り方に問題を残した。政府はこの際、福井地裁による大飯原発再稼働差し止め判決などにもとらわれることなく、大幅に遅延している再稼働を遅くとも秋には実現する方向で事を運ぶべきであろう。原発再稼働は委員会が発足した際には、昨年末か今年初めには開始できるという見通しであった。それが春になり、夏になって、現在ではめども立っていない状況だ。大幅遅延は委員会が合議制であるにもかかわらず委員長・田中俊一が、地震など自然災害の分野で島崎に丸投げしてきたことが大きな原因の一つだと指摘されている。事実上島崎が再稼働の動向を決定づける結果となってしまっていた。まず島崎が率いる専門家チームは、敦賀原発の原子炉建屋直下に活断層があると指摘し、再稼働は困難な情勢にした。電力会社は事実上廃炉を迫られている。
島崎は活断層でない事の証明を求めるなど学者らしからぬ、意図的な姿勢も目立った。審査合格第1号機とされてきた、大飯原発についても島崎が地震の揺れの最大想定を大きく引き上げ、今年度内に再稼働できる見通しを立たなくした。このため自民党再稼働推進派などからの島崎への反発が極めて強く、最近では焦燥気味であったといわれている。9月の退任以降は新体制で臨むことになるが、再稼働審査の円滑化が進むことになりそうだ。後任に決まった田中は経産省の審議委員などを歴任して、いわゆる原子力ムラの権威である。専門は核燃料サイクルで、第一人者とされている。核廃棄物問題にも詳しい。もちろん再稼働には技術的な立場から前向きである。共産党はかつて茨城県議会で田中が原子力関連企業から2011年に51万円の寄付をもらったことを取り上げたが、田中は「純粋に工学研究のための寄付だ」と主張した。田中自身も原発メーカーなどから110万円の研究費を受け取ったことを明らかにしており、何ら違法性はない。政界の大勢は人事を容認する方向にある。反対派の河野太郎が「原発推進派の政府が推進寄りの人に交代させた」と批判しているくらいであり、国会で人事が承認されることは確実だ。
ところで、原発再稼働をめぐっては福井地裁が驚くほど支離滅裂な判決を出した。大飯原発訴訟で判決は、住民の生命や生活を守る人格権が憲法上最高の価値を持つと強調、「大災害や戦争以外で人格権を広範に奪う可能性は原発事故のほか想定しがたい。差し止めが認められるのは当然」とした。しかしこれは、世界における電力関係の死傷者事故では水力発電のダム決壊で起きる死亡事故の方が格段に多いことを知らない判決だ。無知をさらけだした独善的判決だ。また年間膨大な国富が燃料費で流出していることについても、「運転停止で多額の貿易赤字が出たとしても国富の流出や喪失というべきではない。豊かな国土とそこに根を下ろした国民の生活を取り戻せなくなることが国富の喪失だ」などと、まさに噴飯物の判断を下している。判決の言う「豊かな国土」の前提とは豊富なエネルギー源があって初めてなり立つのであって、それには原発が欠かせないのが世界的な潮流である。
地方レベルの裁判だと時々おかしな裁判長が出てくる。 広島高裁が先の総選挙を『違憲で、無効』とする判決を言い渡したのがよい例だ。日本原子力学会は5月27日、福井地裁判決について、「ゼロリスクを求める考え方は科学技術に対する裁判所の判断として不適切だ」と批判したが、至極もっともである。最高裁はかつて伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決で、「原発問題は高度で最新の科学的、技術的な知見や、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との判決を下している。司法がかかわりすぎるべきではないとしているのだ。政府は、石油、天然ガスの輸入で国富が年間3.6兆円も流出し、貿易収支の大幅赤字を招いていることに早く終止符を打つべきだ。また今夏も電力事情が逼迫し、停電となれば病院で死者が出ることも予想される。東電で4割、関電で3割の電気料金上昇が消費増税以上に国民生活を窮迫させていることにも配慮すべきだ。規制委もとりあえず秋には再稼働1号機を認めるべきである。世界気象機関(WMO)は地球温暖化の原因となる二酸化炭素の濃度について、先月、北半球のすべての観測点で400ppmを超えたと公表した。過去80万年で例のない水準で、集中豪雨や熱波など極端な気象現象が増え、気候が大変動の様相を示している。日本は地球規模の問題に責任を持って対処しなければならない。
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