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2014-05-16 00:00
中国経済はバブル依存症
田村 秀男
ジャーナリスト
中国の不動産相場の下落が全土に広がっている。だが、何しろ共産党一党支配の中国のことだ。先進国でイメージするような「バブル崩壊」が起きるとは限らない。どろどろのバブルは強制的にフタで隠され、先送りされ、さらに膨張する。不動産や株式などの資産相場が暴落するのは「バブル崩壊」の一局面に過ぎない。資産相場の下落予想のなか、金融機関が巨額の不良債権を抱え込む信用不安になって、初めて「バブル崩壊」になる。日本の1990年代初め、米国の2008年9月のリーマン・ショックが典型だ。
中国が上記のようなプロセスをたどるだろうか。中国の不動産相場はこのところ地方を中心に下落しているが、中国人民銀行が財務状況を掌握している金融機関の不良債権が急増しているというデータはない(もちろん隠している可能性はあるが)。ここで留意すべきは、中国の「影の銀行」である。地方政府機関を含む不動産開発業者は、銀行からの融資と「理財商品」と呼ばれる高利回りの信託商品で資金調達している。銀行は理財商品のおよそ半分を保証している。過去5年間を合計すると、銀行はおよそ17・5兆元(約300兆円)の不動産関連債権を持つ。中国の国内総生産(GDP)の3割近いので、確かに不動産相場が急落しつづけると、信用恐慌に発展してもおかしくないが、現実は必ずしもそうならない。
中国には特殊な政治システムがある。共産党の指令一つで中国人民銀行が創出、かつ管理する巨額の資金を配分する。まず、不動産相場が一斉に急落を続けるようだと、党中央は人民銀行と国有商業銀行に命じて国有企業や地方政府に資金を流し込み、不動産買い上げに走るだろう。理財商品が焦げ付いた場合、やはり党指令で資金が投入され、理財商品への投資家は保護され、「取り付け」騒ぎを防げる。第2に、仮に大手国有商業銀行のバランスシートが大きく毀損しても、中国は380兆円以上の外貨準備を保有している。この外準を金融機関向け資本注入用に使える。現に、北京当局は2000年代後半に、大手国有銀行を香港などに上場させる際に、外準を使って不良債権を償却させている。
信用不安は銀行の「債務超過」が露見したとき起きるのだが、不透明な党指令型のシステムでは見えなくすることも可能だ。そんな具合で時間を稼ぐうちに不動産相場が反転すればまずは一件落着となる。中国の不動産融資と不動産相場の推移を見ると、不動産相場はリーマン・ショックの後に急激に落ち込んだが、銀行による不動産融資の増加とともに急回復した。その後、不動産熱過熱を警戒した北京当局は不動産融資圧縮を国有商業銀行に命じたところ、相場は急降下し、今度は不動産相場崩落の懸念が生じた。そこで一転して13年には融資規制を解除。すると、相場は再上昇し初め、不動産市場崩壊説を封じ込んだ。だが病巣の広がりは続く。
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