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2014-05-01 00:00
「アジアインフラ投資銀行」に協力するお人好し
田村 秀男
ジャーナリスト
中国主導でアジア各国のインフラ建設を支援する「アジアインフラ投資銀行」構想が習近平共産党総書記の肝いりで打ち上げられた。日本が中心となっているアジア開発銀行は協力するつもりだという。アジアのために日中がカネを出し合う「友好」話と思わせるが、ちょっと待てよ。アジア開発銀行から年2000億円も借りている中国が、アジアに長期、低利資金を供与して、「アジアの盟主」然とする。アジア開銀の最大のスポンサーで、総裁も送り込んでいる日本は「お人好し」すぎやしないか。
中国の楼継偉財務相は海南省で最近開かれた国際会議で、アジアインフラ投資銀行を今秋創設すると表明した。当初の資本金は500億ドル(約5兆円)規模で、中国が過半を出資し、アジアの賛同国が残りを分担するというもので、毎年、数十億ドル規模がインフラ整備用に貸し出される。中国当局はアジア開発銀行の中尾武彦総裁らにアジア開銀の融資を補完すると説明しており、同行側も日本政府も前向きに評価しているという。前述したように、アジア各国が共同出資した金融機関ならアジア開銀がある。そこには日本の財務省が歴代の総裁を送り込んできた。もちろん、この日本主導は日本政府が最大の資金提供者であることの見返りだ。
中国はそれに対し、中国中心の地域開発銀行を関係国との共同でつくるという意味は、中国主導の第2アジア開銀であり、日本に対抗する戦略の一環である。最も解せないのは、冒頭で挙げたように、中国はインドに次ぐアジア開銀からの借り手である。新規借り入れ承認ベースで2012年は約18億ドル、13年は20億ドルという具合である。中国がアジアへの支援者ヅラするつもりなら、まずは借り入れをやめてアジア開銀に資金提供するのがスジというものだ。もうひとつ、怒りを禁じえないのは、中国が周辺国にばらまく環境汚染である。中国は自国の環境浄化投資に国内資金をろくに使わないので、アジア開銀が融資して支援するのが実情だ。それだけでは到底足りないので、汚染物の排出量は減らない。中国はアジアのインフラ支援をする前に、自国の環境をきれいにするのが当然だ。
いくら何でも、アジア開銀にヒトもカネも送り込んでいる財務省は以上のような問題点を認識していないはずはないだろう。だが、雑然としたフィリピン・マニラの中の別天地にオフィスと住居を構えるアジア開銀の日本人幹部にとって、中国関係者といかに仲良く付き合うかは、仕事を難なくこなし、平和裏に任期を全うするのに欠かせない。中尾氏の前のアジア開銀総裁だった黒田東彦氏は昨年、日銀総裁に迎えられたが、アジア開銀時代はアジア開銀が支援するメコン川流域開発を中国色に染めたとの評判がある。官僚出身者に戦略を求めるのは無理だろうが、事なかれ主義きわまれりである。これでは中国の思うつぼだ。
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