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2014-04-25 00:00
(連載2)米中サイバー戦争の休戦で次の標的は日本?
田村 秀男
ジャーナリスト
インターネット空間はもともと国境を超越しているのだから、何も本国発で相手国を直接攻撃するわけではない。それはちょうど、公海で遊弋する原子力潜水艦から発射する弾道ミサイル攻撃のようなものだが、サイバー攻撃の正体と所在地を突き止めるのははるかに難しい。従って、米中間で本土を本拠にしたサイバー攻撃をお互いに控えると約束したところで、気休めにしかならないだろう。
そこで気になるのが、台湾と中国との間で昨年6月に調印した「サービス貿易協定」である。この協定は通信、金融、保険、医療などのサービス産業の市場を相互に開放する建前になっている。台湾のネット専門家によれば、デジタル通信サービスの対中開放はいわば「トロイの木馬」で、中国当局との結びつきがある中国の通信機器大手が台湾の通信ネット技術に参入しやすくなる。その結果、台湾は中国のサイバー監視・攻撃部隊に侵入され、占領されかねない。台湾の通信ネットの中国化はすでに着々と進んでいる。中台間では2013年1月に、大容量の光通信海底ケーブルが初めて敷設、開設された。この通信システムには中国の大手である華為技術(ファーウェイ)が関わっている。米国やオーストラリアでは華為技術は中国人民解放軍が背後にいるとみなされ、国家安全保障上の観点から通信ネットワークから排除されている。
上記の台湾の専門家は無防備の日本の通信ネットが今後は台湾経由で中国に傍受、監視されると警告している。日本政府は華為技術に対して何も規制していないし、民間の通信大手は低価格が売り物のこの会社の製品やシステムを積極的に取り入れている。例えば、日本のグーグルやヤフーなどは日台間の海底通信ケーブルで結ばれている台湾にデータ・センターを置き、日本のネット情報の多くを台湾に集中させている。
中台協定が発効すると、台湾の通信システムは華為技術など中国勢に事実上支配され、日本の情報はやすやすと中国当局の監視下に置かれるばかりか、いいように盗聴され、ハッカー攻撃を受けるというわけである。中国は本土拠点ベースでの対米戦争が休止すれば、今度は台湾に拠点を置いて日本を支配下に置くことに全力を挙げる。そんなシナリオを描いているに違いない。(おわり)
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