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2014-04-24 00:00
「尖閣に安保適用」のオバマの戦略の狙い
杉浦 正章
政治評論家
日米首脳が4月24日合意に達する共同文書は、中国の海洋進出を念頭に対中けん制色の強いものとなる方向だ。その大筋は(1)力による一方的な現状変更の試みに反対、(2)尖閣諸島への安保条約適用、(3)他の東南アジア諸国との連携強化、の明記となる。米国が過去に軍事同盟に関してこれ以上のコミットメントをした例はなく、大統領オバマのアジアへのリバランス(再均衡)政策が、日本を支柱として展開される方向が一段と鮮明となった。欧州における米英同盟と同様に、アジアにおける日米同盟が米国の世界戦略として打ち出されることを意味する。驚いたのは共同文書に、安保条約に基づく米国の行動の範囲が「沖縄県の尖閣諸島は日米安全保障条約の適用範囲に含まれる」と表現する方向となったことだ。今回の首脳会談で外務省は尖閣問題をいかに盛り込むかで、苦心していた。当初米側は中国への刺激を避けるため、尖閣の文字を挿入することすら難色を示していた。しかし対中けん制を意識した場合、文言が入るかどうかで決定的に効果が違ってくる。外務省筋によると一貫して国務省は消極的であったといわれるが、ホワイトハウスがここにきて前向きとなった。
読売とのインタビューでオバマは、中国が挑発行為を続ける尖閣諸島について「日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」と述べ、歴代大統領として初めて安保条約の適用を明言したのだ。いわばオバマ主導で文書明記となる方向だ。この変ぼうの背景はどこにあるのだろうか。第一に挙げねばならないのは世界情勢の激変である。米欧日対ソ連の対決という米ソ冷戦時代と異なり、最近の世界情勢はウクライナ、中東など各地で紛争が生じ、米国はモグラ叩きの対応を迫られる情勢に立ち至った。イラク、アフガニスタンと続く長期の戦争で米国の厭戦(えんせん)気分は高まり、かつての世界の警察官としての役割は果たそうにも果たせなくなったのだ。こうした中でのアジア歴訪となったのだが、ホワイトハウスが目を付けたのが、歴代首相と異なる安倍の姿勢だ。「積極的平和主義」を唱え、集団的自衛権の行使容認という戦後の安保政策の大転換を実施しようとしている。これを“活用”しない手はないとの判断に至ったのだ。
オバマにしてみれば中間選挙を控えて国内には「早くもレームダック化」との悪評が立って、ここで巻き返すにはアジアを起点とするのが最良と判断、安全保障上のコミットメントに大きく踏み込んだのだ。もちろん安保条約の適用範囲に尖閣を加えたからといって、オバマの真の意図を誤解してはならない。オバマは、尖閣などと言う小さな島で、米中が激突するほど馬鹿な話はないとの米国内の世論の延長線上にある対応をとるのだ。つまり、中国を最大限と言えるほど強くけん制することによって、中国の誤算による“尖閣戦争”を未然に防ごうとしているのだ。米国の対中戦略の基本は、台頭する中国との軍事衝突を回避しながら相互依存関係を強め、総合的には政治、軍事両面で常に優位に立つところにある。
従って、日本が中国と対峙するのは、米国にとって戦略上は有利とみるものの、偶発戦争には巻き込まれたくないのが本音だ。こうしてオバマは米国の国力の衰えによって生ずる極東の真空地帯を日米同盟強化で埋める方針を打ち出したのだ。中国に追い抜かれたとはいえ、日本はGDP世界第3位の経済大国であり、1位の米国と3位の日本が結ぶことによって、極東や東南アジアへの主導権を確立しようとしているのだ。共同文書では韓国、オーストラリア、インドなど第三国との協力強化と、フィリピンなど南シナ海で中国の海洋進出に悩まされる国々への支援を打ち出す。これはとりもなおさず、価値観を同じくする自由主義国家群による、“ゆるやかなる対中包囲網”の結成でもある。米国はイギリスをヨーロッパへの押さえの要として重視しているのと同様に、アジアの要としての役割を日本に期待するようになったのだ。オバマは次の訪問国である韓国でも、日本なくして韓国の安全確保は万全ではないとの方針を強調、大統領・朴槿恵に対日協調路線に転ずるようアドバイスするものとみられる。韓国は将来的にはこのオバマの日米基軸路線を受け入れざるを得ないだろう。
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