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2014-04-21 00:00
日米文書で「力による現状変更認めぬ」明示
杉浦 正章
政治評論家
米大統領・バラク・オバマの東アジア歴訪は、日米同盟を基軸として対中封じ込めと対露けん制の色彩を打ち出す方向が濃厚となった。首相・安倍晋三とオバマは尖閣とウクライナ情勢をにらんで共同文書に「力による現状変更を容認しない」ことを明示、フィリピンなどの海洋防衛を日米共同で支援する方針を打ち出す。価値観を共有する東アジア諸国との連携を強化して、東シナ海と南シナ海で膨張戦略をとる中国国家主席・習近平の野望を思いとどまらせる事につなげる。中東、ウクライナで力量を問われたオバマは、アジア太平洋重視政策(リバランス)を再構築して、中間選挙への巻き返しを図る構えだ。日米外交筋の情報を総合すると、4月24日の首脳会談の結果を受けて両国が発表する共同文書の内容が固まってきた。
焦点のTPP(環太平洋経済連携協定)では、コメ・麦などの関税合意を受けて「関税交渉が大きく進展していることを歓迎し、早期に大筋合意を達成する」方針を打ち出すことになる。オバマはTPPの成功をリバランスの核と位置づけており、最終交渉は23日夜の首相・安倍晋三との会食も関係閣僚が出席して実務協議の場となる公算が強まっている。牛肉をめぐってぎりぎりのせめぎ合いが展開されよう。安倍、オバマとしては、交渉に勢いがある内に妥結に持ち込まないと、TPP自体が空中分解する恐れがあることから、政治決断での妥協も視野に入れて瀬戸際の対応するものとみられる。両首脳が最重視するのは、緊迫する極東とウクライナ情勢への対応である。共同文書ではまず日米同盟重視の方針を再確認する。次いで安倍が従来から尖閣問題で主張している「力による現状変更は容認しない」方針を明記する。ただし中国へのあからさまな刺激を避けるため、中国を名指ししたり、固有名詞としての尖閣に言及することはしない方針だ。また国防長官・ヘーゲルが来日で表明した「尖閣諸島に日米安保条約が適用される」との方針は、共同文書では具体的に言及しない方向だ。
尖閣への安保適用ついては大統領補佐官・ライスが「疑う余地のないことである。不安定な安全保障環境の中、同盟関係は強くなるばかりだ」と言明しており、オバマが記者会見等で聞かれれば明言する可能性はある。さらに重要なのは、安倍が東南アジア諸国歴訪で公約してきた安全保障絡みの支援策をオバマが歓迎して、日米共同で支援に取り組む方針を文書で表明することだ。とりわけフィリピンなどへの巡視船提供や乗組員の訓練などにより、南シナ海での中国の海洋進出に日米共同で取り組む方針を確認する。加えて、文書には載せるかどうかは微妙だが、安倍は国内政治の焦点となっている集団的自衛権の限定的容認で憲法解釈を変更する方針を伝達する。オバマはこの方針を歓迎することになる見通しだ。これは集団的自衛権容認が対米公約となることになり、公明党との関係がぎくしゃくする可能性がある。
このような外交・安保上の方針確認は対中けん制が色濃いものとなるが、中国との偶発的な軍事的衝突を回避するための努力を継続することも議題となろう。安倍は、先に行われた習に近い胡徳平との秘密会談の内容や、習が政経分離での対日政策をとりつつあること、日中友好議連の訪中が近く予定されていることなどに言及して、対話への努力を継続する方針も明らかにすることになろう。また、さらなる日韓関係改善についても話し合うことになろう。明らかにオバマは安倍との会談を日米同盟強化を再構築し、韓国、フィリピン、マレーシア訪問への礎石とする方針である。歴訪を通じてオバマは、習近平の露骨な日米分断策、日米韓分断策などに対抗する日米韓の結束強化の巻き返しを達成し、フィリピン、マレーシア支援で対中包囲網を一層強固なものにする戦略の確立を目指している。シリアとウクライナで失った失地回復を東アジア歴訪で達成しようとしており、この流れは対中けん制の意味で安倍にとっても歓迎すべきものであろう。
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