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2014-04-20 00:00
(連載2)外界を見る眼の「日本化」という陥穽
植田 隆子
国際基督教大学教授
欧州の地域特性は、事務局と加盟国の常駐代表部を備えた、NATO、EU、OSCEといった、地域的組織が重要な役割を担っていることである。小野寺防衛大臣は、昨夏、ウィーンのOSCE事務局を訪問し、常設機関の有用性に着目し、8月に開催されたASEAN拡大国防大臣会議(ブルネイ)で定期的かつ頻繁に会合するために、OSCEのような制度を提案し、米ロなどから賛同を得たと毎日新聞(4月11日朝刊)は報じている。小野寺大臣は8月のブルネイでの記者会見でこの点を詳述されたが、筆者の知る限りでは報道はなされず、昨年4月に訪日したNATO事務総長が記者会見でOSCE的な組織のアジア太平洋での必要性について言及したことも知られていない。
本稿の前半で引用した「日本化」の特徴の延長線上に、視角が限定されて盲点ができることに加えて、大きな脅威に気付いた時、対処に慣れていないため、対称的な抑止一点張りになり、欧州地域のような、抑止と危機低減の組み合わせという発想を欠くことが観察される。常設組織の設置という観点がないことも指摘できよう。このような状況下で、小野寺大臣によって、この地域では斬新な将来構想が打ち出されていることは特筆に値する。
すでに、インドネシアからは「インド太平洋友好協力条約」構想が出されている。4月15日にソウルで日中韓協力事務局が開催した国際会議(概要は、http://jp.tcs-asia.org/dnb/board/view.php?board_name=2_1_news&view_id=169)で、北京大学の教授は、危機低減のために北東アジアでCSBMのメカニズムを早急に導入する必要性を強調した。将来の秩序構想をめぐる議論を推進することは建設的である。(詳細は、筆者による「欧州安全保障協力機構(OSCE)の危機低減措置と安全保障対話:制度・実態とアジア太平洋地域への適用可能性試論・資料」ICU社会科学研究所刊 http://subsite.icu.ac.jp/ssri/で4月22日以降閲覧可能)
日中韓協力事務局は、多くの行事を実施し、ここでも、恒常的な事務局の有用性が示されている。二代目の事務局長である岩谷滋雄大使の前職は、OSCEも所掌するオーストリア大使であり、4月15日の会議には米国国務省からOSCE事務局に出向中のスピーカーがOSCEについて説明した。前職がEU代表部勤務だったアイルランドの韓国大使は、持続的な地域協力には組織と合意されたルールが必要とし、政治的な雰囲気が困難な時期でも組織が地域協力を確実にすると説明した。アジア地域の専門家だけが集まって議論しても発想が固定化するので、欧州を知る専門家を交えた議論は、「日本化」の陥穽を免れる一つの方策であろう。(おわり)
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