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2014-04-17 00:00
中国のネット支配が台湾から日本へ
田村 秀男
ジャーナリスト
台湾では、中国との間で昨年6月に調印した「サービス貿易協定」の議会承認に学生が反対し、台湾の立法院(国会に相当)議場を占拠する事態になったが、日本にとって決して対岸の火事ではない。中台サービス貿易協定は、2010年9月に発効した事実上の自由貿易協定(FTA)にあたる「経済協力枠組み協定(ECFA)」の柱の一つで、通信、金融、保険、医療などのサービス産業の市場を相互に開放する建前になっている。協定の中身が不透明であることや、中国資本が台湾に進出することで台湾の中小企業が圧迫されると反発する声が高まっている。それが学生による抗議運動の背景だと日本では報じられているが、もっと切実な理由がある。
台湾のネット専門家によれば、デジタル通信サービスの対中開放はいわば「トロイの木馬」で、中国当局との結びつきがある中国の通信機器大手が台湾の通信ネット技術に参入しやすくなる。その結果、台湾は中国のサイバー監視・攻撃部隊に侵入され、占領され、台湾の学生や市民が中国で行われているような監視、検閲の対象になりかねないとの恐れが強い。中台間では2013年1月に、大容量の光通信海底ケーブルが初めて敷設、開設された。この事業は中台の大手通信サービス6社の共同だが、通信システムには中国の大手である華為技術(ファーウエイ)が関わっている。米国やオーストラリアでは華為技術は中国人民解放軍が背後にいるとみなされ、国家安全保障上の観点から通信ネットワークから排除されている。華為製の機器がネットに組み込まれると、機密情報が中国側に流出したり、サーバー攻撃にさらされやすくなるとの懸念があるからだ。
日本政府は華為技術に対して何も規制していないし、民間の通信サービス大手は低価格が売り物の同社製品やシステムを積極的に取り入れている。上記の台湾の専門家は無防備の日本の通信・ネットが今後は台湾経由で中国に傍受、監視されると警告する。例えば、日本のネット情報の多くは海底通信ケーブルで結ばれている台湾のデータ・センターに送られている。中台協定が発効すると、台湾の通信システムは華為技術など中国勢に事実上支配されるので、日本の情報はやすやすと中国当局の監視下に置かれる、というわけである。
国家の組織が大量に巨大なバグ情報を相手のウェブサイトに送り付けて機能不全にするなどのサイバー攻撃に対しては、通常、攻撃される側が相手を特定して防御する。手の内を明かさないように水面下で「やりかえす」静かな戦争だ。それに比べ、民間の場合、ネット上の個人や企業情報がシステムの弱点をつかれて侵入されても、多くの場合、気付かないままになる。気付いても、犯人の正体は不明だ。防ぐためには、通信システムを怪しげな勢力に支配されないことだ。台湾から目を離せない。
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