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2014-04-16 00:00
結局大幅改造にならざるを得まい
杉浦 正章
政治評論家
「改造するほど総理の力は落ち、解散するほど上がる」と漏らしたのは佐藤栄作だが、その佐藤は在任の7年8か月の内に6回改造して最多記録を作っている。さすがに「人事の佐藤」と呼ばれただけあって、幹事長、官房長官、蔵相など主要人事ではまず失敗はなかった。ただ佐藤3選に反対して外相を辞任した三木武夫を外相に起用したことだけは「不明のいたりであった」と国会答弁で反省している。首相・安倍晋三がこの夏内閣改造を断行しようとしている。現内閣は昨年12月26日発足以来16日で477日に達している。改造までの期間が一番長かったのは佐藤内閣の425日だから、改造なしの最長期間を更新し続けている。首相自身もまだ改造の構想は固まっていないが、人事の焦点はどうなるのであろうか。安倍が人事に手を付けることを嫌ってきたのは、現内閣がベストの布陣と思っているからだろう。確かにこれほど閣僚の不祥事が発生しない内閣も珍しい。発足以来1人として辞任に至っていない。内閣の要の官房長官・菅義偉は見事に首相を補佐しているし、幹事長・石破茂も、衆参407人の大所帯をほとんど波風立てないで運営している。
何と言っても衆参両院で国民が自民党を圧勝させたことが政権安定の原因となっているのだろう。国政選挙に圧勝すれば政権は長続きするのが常だ。この順風満帆の政権に手を加えることは安倍でなくとも躊躇したくなるだろう。
しかし、あつれきの萌芽が出てきているのも確かだ。集団的自衛権の容認をめぐって一部に不満が生じたし、安部側近の右傾化発言が岸田派など党内リベラル系を刺激していることも確かだ。入閣待望組も多い。当選5回以上の入閣候補は約50人に達しており、野に下った3年に加えて600日もお預けを食らったのではたまらない、という議員心理もざわめきの原因だ。従って夏の改造は必然的にやらざるを得ない状況なのである。党役員の任期も9月で切れるから、これにも連動させざるを得ないのだ。まず改造が大幅になるか、中幅、小幅にとどまるかだが、これだけ待望組が多くては、小幅はない。官房長官と幹事長の処遇によっても規模に影響する。
とりわけ菅は、独特のバランス感覚で安倍の突出発言のカバーや側近の蒙昧(もうまい)なる右傾化発言にブレーキをかけるなど、内閣のスポークスマンとしてのさばき方はうまい。維新など野党対策も上首尾である。歴代長期政権を見ると、佐藤政権は官房長官を6回代えているが、中曽根政権は後藤田正晴と藤波孝生だけ。小泉政権は3回代えている。佐藤政権は高度成長が続き、政治の安定期であり、女房役を代えてもそれほどの影響はなかったが、現在は極東の安全保障環境一つをとっっても激動期の様相を見せており、ここで官房長官を交代させることはばくちに等しい。他は皆代えても官房長官だけは留任させることが長期政権につながる。もし代えるとなれば、菅を幹事長に回し、官房長官には甘利明を持ってくることも考えられるが、甘利は体力が持つか心配だ。やはり菅の留任がベストだ。一方で、石破を替えるかどうかだ。石破自身は「どっちでもいい。役にある時はその仕事を一生懸命やり、何の役にも就いていない時は、自分の力を蓄えて高める」と述べている。たしかに野に下った石破の動きは過去にもすさまじかった。
幹事長・谷垣禎一が石破を政調会長から外したときも、地方を回って党員の支持を獲得する事に専念して、結局総裁選では党員の支持でトップとなり、安倍をおびやかした。その石破を野に放つことは「来年の総裁選でチャレンジしてこい」と言うようなものだ。だいいち衆参両院選挙で圧勝した幹事長はむげには出来ない。従って留任か、さもなくば財務相か外相で入閣させる事がベストだ。財務相は年末に消費税を10%に上げるかどうかの判断を迫られる。安倍は上げたくないのだろうから、財務省に抱き込まれている麻生太郎を代えるべき時と考えるかも知れない。外相は秋の臨時国会で集団的自衛権をめぐって激しい議論が展開されることが予想され、石破は適任であろう。財務か外務を経験すれば、石破は立派な首相候補となり得る。首相のつとめは後継を育成することにあることを忘れてはなるまい。麻生、石原伸晃、谷垣、岸田文雄ら派閥の領袖は、この際お引き取り願うことが得策だろう。組閣においては、これらの領袖を内閣に取り込むことによって、不協和音をなくすことが重要ポイントであったが、もうその必要はあるまい。むしろ領袖は久しぶりの改造で自派の幹部を推挙すべき立場であり、「俺が俺が」では派内が持たないだろう。改造というものは着手すると、どうしても大幅になる可能性が強く、安倍の場合も結局大幅改造とならざるを得まい。
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