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2014-04-07 00:00
「新型大国関係」の裏でドルに従属する人民元
田村 秀男
ジャーナリスト
オランダ・ハーグでの核安全保障サミットに先立ってオバマ米大統領と中国の習近平国家主席が会談し、「新型大国関係」を強化することで一致したという。ワシントン側は以前、米中の緊密な協力関係を意味する「G2」を口にして北京に誘いかけたが、北京側は拒絶したいきさつがある。北京にとってのG2とは、米国の要請に応じるよう圧力をかけられる場になると警戒したのだ。
オバマ政権はロシアを牽制するため、別の言い方で中国に改めて誘い水をかけたが、中国側は今回ばかりはむげに断れない。経済・金融の側面からすれば、中国は対米配慮せざるをえないほど窮地に立つ。2008年9月を起点に米中の中央銀行によるお金の発行量(マネタリーベース)の増加額の推移を追ってみると、マネタリーベースは本来、各国独自の経済・金融事情に応じて調節されるのだが、中国は11年後半から、明らかにドルの発行量に合わせて人民元を供給していることが読み取れる。今年1月の米中のそれはほぼ同額であることも興味深い。中国人民銀行は米連邦準備制度理事会(FRB)のマネタリーベースを基準にした金融の量的拡大に徹しているのである。
中国人民銀行は歴史的に、人民元の相場を絶えずドルに対して固定する政策で一貫してきた。やり方は、流入する外貨をことごとく人民銀行が買い上げ、外貨流入量に応じて人民元を発行する。11年9月頃まで人民銀行が保有する外為資産増加額と人民元発行額の増加量がほぼ一致してきたのはそんな背景がある。ところが11年秋からは外為保有増加額をはるかにしのぐ勢いで、人民銀行はマネタリーベースを増やしている。他方では、マネタリーベースの増加額をドルに沿うように推移させている。外貨流入額にこだわらずに人民元を発行せざるを得なくなった背景には、不動産バブル崩壊不安がある。人民銀行はお札を刷っては主として国有商業銀行に流し込み、商業銀行が融資を増やすわけだが、12年初めからは投機資金が国外に逃げ出した影響で、貿易黒字を合わせても流入外貨が増えなくなった。
人民銀行がそのままマネタリーベースを増やせなくなると、不動産市場にカネが流れなくなる。金詰まりで不動産市場が崩れる。そこで、人民銀行は保有外貨の裏付けなしに、人民元を増刷し出した。ただし、新たな目安はドルの発行量として、人民元の安定を意識している。米国に対する中国の弱みは、ドルへの従属関係にある。中国は世界最大の米国債保有者だからと言っても、大量に売って米国債相場を暴落させると、中国は巨額の損失を負う。従って、保有米国債は「人質」ではあっても、武器にはなりえない。通貨はその国にとっての安全保障を左右する。中国は米国との関係を壊すわけにはいかないのだ。
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