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2014-03-19 00:00
安倍はプーチンを“友情ある説得”せよ
杉浦 正章
政治評論家
機を見るに敏な一人の政治家に世界中が振り回されている。ロシア大統領・プーチンはウクライナ南部のクリミアをロシアに編入した。オリンピックで高まった愛国心を、クリミアをめぐるナショナリズムと同化させ、ロシア国内の世論を一挙に自らの支持に傾けさせた。しかし先が見通せるからこそ、焦点のウクライナ東部への侵攻は、まず決断しないだろう。侵攻して戦争となって、ささやかれているように中国とロシアが軍事同盟に向かえば、火の粉は極東に転ずる。米大統領オバマと中国国家主席・習近平との核サミットでの会談が注目されるが、首相・安倍晋三も手をこまねいているときではない。就任以来5回も会談しているプーチンとの良好な関係を活かすときだ。核サミットで会談を実現して、ウクライナ情勢のさらなる緊迫化を“友情ある説得”で断念させるべきだ。
プーチンのロシア国内での人気は就任以来今ひとつぱっとしなかったが、圧倒的支持率をオリンピックとクリミア編入で獲得し、国内政治基盤は確立した。しかし、世論の支持が永続するかどうかは予断を許さない。さらなる軍事行動を続けた場合、現在は痛くもかゆくもない限定的な制裁措置が、本格的な経済制裁へと移行する可能性がある。そうなれば、ロシア経済はさらに締めつけられる。東部のロシア系住民を煽って暴動を頻発させ、その住民の保護を理由にウクライナに侵攻すれば、ウクライナとロシアは戦争に突入する。米欧諸国もウクライナ支援の軍事行動を起こす可能性が強い。ロシアの国力からいって、米欧を相手に戦争をしても、勝ち目はない。ロシア系住民が圧倒的多数を占めるクリミア編入の場合は、もともとソ連に帰属していたものをフルシチョフの独断でウクライナに編入させた経緯があり、米欧の底流を流れる空気としては、渋渋ながら仕方がないというところもあるであろう。しかし、東部ウクライナ侵攻となると、事態はがらりと変わる。したがってプーチンがそうした無謀の選択をするとは思えない。欧州安保協力機構(OSCE)が、多国籍監視団を派遣して、現地の治安を維持する方向だが、これはロシアにとっても悪い話ではあるまい。
冒頭述べたように、中ソ軍事同盟が出来て、米欧と対決するような情勢が出来れば別である。しかし、中国は国連安保理でロシアの孤立を際立たせ、クリミアの住民投票を無効とする決議案に棄権しており、中立的な立場を維持した。中国にしてみれば、ただでさえ尖閣諸島や南沙諸島をめぐる主権侵害行為や少数民族への弾圧で世界的な評判が悪化している中で、ロシアのクリミア侵攻を支持すれば、まるで「力による現状変更」で「悪の枢軸」が結成されることになる。習近平としては、ここは大人しくしておこうという打算が働いたのであろう。オバマがどう動くかだが、一段と中国重視の動きに転ずる公算が高い。一つには、中国をロシア側に追いやることを避け、少なくとも中立を維持させたいとの判断がある。また習を通じてプーチンを説得出来ればという思惑もある。加えて、中国が尖閣問題で日本と事を構えて、米国が巻き込まれるのを回避したいという思いも強い。習にしてみれば、米国と親しくすればするほど、日本を政治的に孤立化させることが出来るのであり、核サミットのオバマ・習会談が“猫なで声”を基調とすることは想像に難くない。
一方、中国、ロシアの双方と領土問題を抱えている日本も、ロシアのクリミア編入はよそ事ではない。前稿で指摘したように、中国が力による主権侵害が可能になったと大誤算して、尖閣に侵攻する可能性があるからだ。日本がなすべき事は、中国とロシアの軍事同盟の阻止であり、ロシアとの関係維持だ。日本の制裁も軟らかなものであり、米欧諸国と温度差はあって当然だ。G7の中でも安倍がプーチンとの間で培った友好関係は突出している。むしろオバマは習を頼りにするより、安倍を頼りにする方が得策であると気付くべきであろう。それにはオバマに気付かせる必要がある。安倍は核サミットを好機ととらえて、プーチンとの会談に臨むべきだ。プーチンと会談して、ウクライナ情勢のさらなる混迷に歯止めをかけるよう申し入れるべきだ。ロシアの世界的な孤立はおおうべくもないが、これは北方領土問題で譲歩を勝ち取る材料になり得る。他方で、集団的自衛権の行使に向けて、着実に歩を進めるべきだ。ここで躊躇すると、やはり中国の誤算を招きかねない。日米関係にひび割れが生じたと受け取るのである。このように、ウクライナ情勢は確実に極東情勢に連動し、展開する流れであり、固唾をのんで見守る必要がある。
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