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2014-03-15 00:00
(連載1)人民元には脅威、円にはチャンスの 「ビットコイン」
田村 秀男
ジャーナリスト
電子空間で創造される「ビットコイン」。その本質は史上空前の無国籍通貨である。ビットコインは、ドル、円、ユーロの3大国際通貨に取って代わるわけではなく、むしろ迅速かつコストほぼゼロで3大通貨に交換できるところに特徴がある。中国人民元やロシア・ルーブルなどドルやユーロとの交換が国内に限られ、しかも当局により規制を受けている新興国法定通貨はビットコインに駆逐される恐れがある。それを知っているからこそ、日米英ユーロの当局者たちは、ビットコインを容認し、税金を徴収することに腐心している。米国にいたっては、ウォール街とシリコンバレーの合作で、第2、第3のビットコインを作り出し、新ビジネスに仕立て上げようとしている。円にとっても国際化加速の手段にもなりうる。世界最大の債権国通貨だから、ビットコインを経由して円建て資産が買われるのだ。
ビットコインは金並みの希少価値があると思わせるうえに、保有者は身元を知られずに、安いコストで瞬時に資産を国外に移す手段になるのだから、自国通貨に信用が置けない国民にとってはまさに最後のよりどころとなる。当然、最大の攻防の場はバブル不安の中国となる。ビットコインは2009年、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物のインターネット論文の賛同者によって開発され、10年7月からインターネット上で各国通貨との取引が始まった。ビットコインの入手(「採掘」と呼ばれる)は複数のコンピューターを駆使してきわめて複雑で高度な数式を解くことが条件となる。総量は限られ、採掘者が多くなればなるほど、入手量(供給)は少なくなる。利用者(需要)が増えるに従って相場が上昇する仕掛けだ。
最近ではビットコイン専用の現金自動預払機(ATM)も登場し始めた。ビットコインでの支払いを受け付けるレストランや商店も世界各地でぼつぼつ増えている。それでも、通貨としての使い勝手はいまいちだ。モノを買ったり、一般の人の手から手へと流通するには限度があるし、そのままでは国債や株式にも投資できないし、融資も受けられない。各国の紙幣や硬貨にないビットコインの強みはそれ自体が国家の保証がなくても価値を持つ点だ。ビットコインは国境を軽々と越え、アフリカの紛争国から鎖国状態にある北朝鮮の通貨ウォンまでも交換できるというから驚く。
昨年3月に勃発したキプロスの金融危機はビットコインの存在価値を飛躍させた。同国金融機関に資産を預けていたロシアの大口預金者が一斉にビットコインに殺到し、1単位あたり60ドル前後だった相場は3倍以上に高騰した。そのあと、ビットコイン取引が急増してきたのが中国である。世界最初のATM設置場所は、多くの中国の富裕層とその一族が永住権を取得しているカナダ、次いで香港、さらにカナダに次ぐ移民先のオーストラリアといたれりつくせりだ。(つづく)
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