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2014-03-06 00:00
米軍の「ゼロ・オプション」からみえる内向き志向
川上 高司
拓殖大学教授
2月25日、オバマ大統領はアフガニスタンのカルザイ大統領に電話をし、アメリカとアフガニスタンの安全保障協定に署名しないなら米軍の全面撤退もあり得ると脅しをかけた。安全保障協定は、米軍の対テロ政策の部分が納得がいかないとカルザイ大統領が署名を拒否し続けている。この安全保障協定は2014年以降2024年まで米軍の駐留を認める協定だが、その駐留規模を巡ってはアメリカでも議論が継続している。
カルザイ大統領が問題にしているのは駐留規模ではなく、その内容である。対テロ対策として米軍はアフガニスタン人の民家にも急襲をかける「拘束作戦」を実施したいがその作戦の詳細についてカルザイ大統領は曖昧だと反発している。カルザイ大統領は4月に行われる大統領選挙で選出される新しい大統領に判断をまかせると主張しているが、アメリカはそれまで待てないと圧力を強めているのだ。
今年になってアフガン政策で政権が2つに割れている。オバマ大統領周辺と国務省はアフガンからの完全撤退を「ゼロ・オプション」と呼んで主張するようになった。これに対して国防総省の一部では反発が起こり、現場の司令官たちは1万人規模の駐留が必要だと主張している。ゼロ・オプション派の言い分もわかる。アフガニスタンのために使うより国内政治のために予算は使うべきだというのがその根拠だ。昨年12月に出されたNIE(National Intelligence Estimate)では、米軍が撤退し数千人の駐留では2017年までにタリバンなどの勢力が盛り返すだろうと予測している。いずれタリバンが盛り返すのであればさっさと撤退すべきだというのだ。
議会も割れている。アフガニスタン戦争は国民に人気がなく厭戦ムードが広がっている。「兵士を帰国させよう」とゼロ・オプションに喝采を送る議員もいる。もちろん駐留推進派もいる。いまのところ両者のせめぎ合いはゼロ・オプション派が有利なようである。要するに予算がない、のである。ヘーゲル国防長官は今後2年間で750億ドルを削減するつもりである。陸軍は過去70年間で最少数と言われるレベルまで削減する。海外駐留する余裕はないのである。オバマ大統領はおよそNOと言われるとわかっている最後通牒をカルザイ大統領につきつけ、NOと言われたことを理由に嬉々として全面撤退をするつもりなのではないだろうか。アメリカの内向き志向は本気度が高い。
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