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2014-03-02 00:00
中国の国内制度改革に期待する
池尾 愛子
早稲田大学教授
中国本土において、日本研究は自由かつ専門性高く行われているようで、「中国人は日本人、日本の歴史、政治・経済について隅から隅まで研究している」という声が聞こえてくるくらいである。中国の日本研究者たちは、日本に初めて来る機会があれば、積極的に靖国神社に立ち寄って日本理解の糧の一つとしているようだ。そのため、「日本人にとって靖国神社やその境内は何か」といったことがかれらとの間で話題になることがある。それに対して、台湾(中華民国)やシンガポールの人たちと話している時に、靖国神社のことを話題にしようとすると、拒否反応に近い態度を示されることがある。靖国神社はとても受け入れられるものではなく、立ち寄る場所でもないとされているようだ。それでも、ある年、千鳥ヶ淵の満開の桜は楽しんでもらえて、ほっとしたことがある。
もしある国が、過去の植民地支配を想起させる象徴的施設をめぐって、日本以外の国々において、日本において語られていることとは異なることを、積極的に話し始めるとどうなるだろうか。日本にいる人々もいつかはそれに気づくことであろう。海外にいる友人が多ければ多いほど、その情報ギャップに早く気づくはずである。一見、日本の政治リーダーによるその象徴的施設訪問が、海外におけるこうしたネガティブ・キャンペーンを引き起こす原因となったかのようにみえる。しかし、ネガティブ・キャンペーンは用意周到に展開されており、まるで日本の政治リーダーを象徴的施設訪問に誘い込んだかのようにも見える。
なぜだろうか。中国を訪問したい人たちは多い。観光やビジネスを目的とするだけではなく、中国人研究者との学術交流を渇望する人々も多いようだ。しかし、中国の環境汚染は日を追うごとに悪化の一途をたどっている。PM2.5を含むとされる大気汚染はまるで煙幕のごとく中国を包み込み、内部の情況を不透明にするばかりか、訪問・滞在希望者を怖気づかせるほどの深刻さになっている。それでも遠方に住む人々の燃えたぎる好奇心を抑え込むことはできず、近隣の日本に滞在しながら、中国人との交流機会を見出そうとしたり、中国に短期間旅行したりする人々が増えそうな予感がしている。そうした中国への様々な関心を抑え込もうとして、ネガティブ・キャンペーンが行われているかのようにも思えてくる。
それはなぜだろうか。民主主義が怖い、という以外の理由はあるのであろうか。中国は政治改革を行う意志はないが、経済改革を行う意志はあると伝えられている。経済改革の程度をめぐって、政治闘争があるのであろうか。海外での長期研究滞在経験を昇進資格の一つに加えた大学があるとの情報も伝わってきている。学問の自由をめぐる攻防もあるのであろうか。中国の国内制度改革の遂行に向けて、海外からの圧力が必要であるとの声も伝わって来ている。政治改革なくして国内制度の諸改革はどのくらい可能なのであろうか。共産党がビジネスを掌握し続けることは可能なのであろうか。海外からの関心の焦点はかなり絞られてきているように思われる。
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