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2006-10-02 00:00
機能重視の東アジア共同体論の再確認
舛島 貞
大学助教授
周知のとおり、東アジア共同体は、アイデンティティや意識、あるいは政治・安全保障面での共同体を目指したものというよりも、「機能」面に着目した共同体として想定されてきた。共同体論はとかくアジア意識や地域的な連帯に意識がむかいがちだが、いまあらためて、この機能面について確認し、考えねばなければならないだろう。
2005年12月5日付け「CEACコラム」に掲載された田中均氏の論説「東アジア共同体 展望と課題(上):経済軸に機能協力推進」において、田中氏は、「日本は従来より、組織よりも、まず機能的協力を拡大していくべきだと主張してきたが、筆者は三つの大別した機能に着目した共同体作りを目指すべきだと思う」と述べ、以下の3点を提示した。第一に東アジア地域経済連携協定。これはシンガポールと結んだ経済連携協定を、ASEAN諸国だけでなく、中国、オーストリア、インドにも拡大し、多国間協定になるよう構想すべきというもの。第二は、キャパシティー・ビルディング(能力構築)。これは、後発国の経済インフラ開発や人材育成などを意味し、各国とともにODAを集中活用する構想。第三は「人間の安全保障」。津波、HIV、鳥インフルエンザ、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散などの人々の安全を阻害する諸問題に地域が共同で取り組む点における機能的協力の拡充。他方、田中氏は、機能面に注目した共同体構想を支えるものとして、政治体制の改善を視野に入れた、また形態の多様性を踏まえた民主主義を軸とする普遍的価値の共有をも唱えている。
2006年9月28日付け「CEACコラム」に掲載された伊藤元重氏の「経済・社会の開放進めよ」を読むと、田中氏の文章が掲載された2005年12月からの約2年で問題点や課題があまり動いていない、あるいは目立った成果が見られないのではないかという印象をもつ。日中を含め、東アジアにおいて経済的な関係が緊密であることは言うまでもないが、関係が緊密であることが必ずしも機能の形成に直結するわけではない。機能面を重視すると言うと、経済関係などが築かれる中で自然に形成される秩序、であるかのような印象をもつが、果たしてそういうものであろうか。確かに、この間、FTA交渉も進んだであろうし、災害などに対する対応の規範も進んできている。だが、田中氏が2年前に想定したような、大きなヴィジョンの中で、それらはどのような「機能」として想定されたものか。
行政面でのイニシアティブ、政治的な決断、そしてそうしたものを位置づけるヴィジョンと説明、そうしたものがあってこそ、緊密な経済交流とそこに形成されるさまざまなもの、そして外交交渉の積み重ねが生きていくことになる。そのことを現在、あらためて再確認し、年末フィリピンで開催される一連の首脳会議とそれ以後のことを構想すべきだと考える。
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