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2014-02-21 00:00
経済連携協定と通貨の安定
田村 秀男
ジャーナリスト
アベノミクス「第1の矢」、日銀の異次元金融緩和策でことしも、国内総生産(GDP)の十数%相当の日銀マネーが新たに金融市場に注がれる。金融主導経済に死角はないのか。国際標準株価指数「MSCI」でトルコなど新興国と日米の株価(ドル建て)の推移をみると、トルコの急落ぶりが際立つ。同国は実質経済成長率が年4~5%も伸びているのに、なぜか。最大の原因は米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小である。QE縮小の観測が出始めた昨年前半から、欧米の投資ファンドが一斉にトルコ企業株を売り始めた。資本流出に歯止めがかからず、通貨「リラ」は下落し続ける。
市場不安は同国の政情不安による、との見方が市場アナリストの間で多い。確かに盤石に見えたエルドアン政権は最近、イスラムの支持勢力で仲間割れが起き、側近の汚職騒ぎなどで揺さぶられている。しかし、年末年始に現地を回ってみたら、世情は安定しており、人々は勤勉そのものだ。政局は国際投機筋の「売り逃げ」の口実にすぎない。その証拠に、トルコに限らず、株や通貨の不安は新興国全体に及んでいる。政情が比較的安定しているインドネシアもトルコに連動する形で株価が下落している。
ニューヨーク・ウォール街やロンドン・シティに拠点を持つ投資ファンドはグローバルな資産運用を行い、米国市場がだめなら新興国での運用比率を引き上げるが、米市場が回復してくれば、さっさと手じまいする。これまでの「新興国ブーム」はいわば、ドルの洪水に浮かぶバブル(泡)だったのだろう。アベノミクスの日本は株高で浮かれてもいられない。米欧の投資ファンドを中心にした外国投資家は円安=日本株買いという自動売買プログラムを稼働させるので、株高が導き出される。外国投資家の投機に左右される点では、東京市場もイスタンブール市場も同じなのだ。
そのトルコのエルドアン首相が新春早々来日し、安倍晋三首相と日本・トルコの経済連携協定(EPA)交渉開始など経済関係強化で合意した。欧州とアジアの結節点で人口が毎年約100万人も増えている同国は市場として大いに有望だが、日本は国際金融を含め、従来にない広範囲の連携協定をめざしたらどうだろうか。トルコはグローバルな資本移動に翻弄されており、正当で適切な国内開発に努めていても、ニューヨークやロンドンの投機勢力によってもみくちゃにされる。巨額の外貨準備を持つ日本はトルコの為替安定に協力することで、同国の持続成長に貢献できる。新しい枠組みはブラジル、インドなど他の新興国との経済連携のモデルとすればよい。
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