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2014-02-12 00:00
小泉・細川の「政治生命」は終わった
杉浦 正章
政治評論家
第2次小泉劇場は「大根引っ込め」のヤジと共に幕を下ろした。二人の主役がすごすごと花道を去るの図だ。小泉純一郎も細川護煕も元首相の身でありながら、無知蒙昧(もうまい)の「原発ゼロ」を都民に拒絶され、しゅうと爺さんのように国政に口を出すとどうなるかを身にしみたに違いない。首相・安倍晋三は衆参両院選挙と都知事選挙という原発がテーマの3つの重要選挙に圧勝したのだ。ちゅうちょなく再稼働を実施し、未来への展望と希望を切り開く核燃料サイクルを推進し、世界の原発ブームの潮流に乗り遅れるべきではない。とりわけ中長期的なエネルギー政策の指針になるエネルギー基本計画の閣議決定は、原発を堂々と「ベース電源」と位置づけ、年間3.6兆円にのぼる国富の流出を早期に食い止めるべきだ。
新都知事・舛添要一が「私も脱原発」と述べたのは、小泉の「ワンイシュー戦略」に乗せられないために打ち出した一時の便法であり、これが見事に図に当たって一点集中選挙化を防いだ。さっそく脱原発論者はTBSのコメンテーターのように「脱原発の方が数が多い」と負け犬の遠吠えを繰り返しているが、政治記者なのに政治を知らない。ここで重要なのは「脱原発」にもいろいろあって、口先だけのキャッチフレーズから、共産党のように「即ゼロ」まで幅が広い。安倍が「原子力への依存度は低くしていきたい」と述べながら期限を区切らないのは100年先か、1000年先か、科学技術の進歩に伴って変化しうると見ているのであり、「当面は原発推進」と言っているのと変わりはないのだ。要するに「福島の粉じん」が治まって、原発再稼働の「心地よさ」を多数の国民が再認識して、その上で右か左かが決まってゆくことなのである。
そもそも安倍は選挙に先立つ施政方針演説で、原子力規制委員会が安全と認めた原発から再稼働する考えを重ねて強調した。再稼働は明らかに「入原発」の公約であり「脱原発」ではない。この結果都知事選挙は政治的には再稼働の安倍と「原発即ゼロ」の小泉の代理戦争の様相であったことを意味する。その代理戦争に紛れもなく安倍が完膚なきまでに勝ったのであり、国政選挙に次ぐ圧勝はもう原発論争に勝負がついたことを意味する。朝日新聞など反原発派は、さらに続く知事選などで原発反対派が勝てば、鬼の首を取ったようにデカデカと報ずるに違いないが、もう自治体選挙が国政に介入することは筋違いと悟るべきだ。原発にストップをかけたいのなら、国政選挙で勝つべきであることは言うまでもない。 安倍政権は選挙への影響を考慮して先延ばしにしていたエネルギー基本計画を月内にも閣議決定する。既に昨年末に経済産業省の審議会がまとめた素案では原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけた。従来は「基幹電源」の位置づけであったが、一段格下げした感は否めない。「ベース電源」とは安い燃料コストで24時間稼働し続けることを意味しており、反対派の新聞はこの表現ですら修正を迫っている。しかしもう都知事選への配慮は必要なくなった。
安倍も国会答弁では「そう簡単に『原発はやめる』とはいえない」と述べている。したがって原発維持の方針に変わりはないということであり、もうごまかしのように受け取られる基本計画の表現は避けるべきである。重要なのは原発をベースにしてエネルギーミックスを達成しようとする姿勢なのである。さらに世界は原発新増設ブームである。これに乗り遅れることは紛れもなく国家の衰亡に直結する。現在でも国民1人あたり3万円の化石燃料費がアラブ諸国などに流出、石油の価格も上がる一方だ。既に貿易収支の悪化は限界にまで達している。政権を担当する以上、もう躊躇してはならない。都知事選は紛れもなく免罪符として活用されるべきものである。
筆者は細川・小泉のタッグマッチに、荘子に「寿(いのちなが)ければ則ち辱多し」があるとと指摘したが、二人にとって恥多しの選挙であった。都民は今回だけは選挙を「遊び」とすることを控えた。浮動票も舛添に流れた。電気料金、石油価格の高騰に苦しむ一般家庭や中小企業。せっかくのオリンピック招致を細川で成し遂げられるのかという危険性。今すぐあってもおかしくない直下型大地震。こうした状況を考えれば、細川3位の惨敗は当然の結果であろう。なによりも小泉、細川のポピュリズムに立脚しようとする“邪心”と“野望”が否認されたのだ。細川はろくろの前に座り直すのが、姿として似合う。小泉も「劇場選挙の夢よもう一度」は儚く散った。もう二度と政治の場に出てこなくてよい。その政治的な能力の限界をさらしたからだ。小泉に同調した息子の進次郞の判断力の甘さも露呈した。まだまだ雑巾がけが足りない。
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