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2014-02-07 00:00
株価急落のトルコは対岸の火事ではない
田村 秀男
ジャーナリスト
トルコのエルドアン首相が新春早々来日し、安倍晋三首相と日本・トルコの経済交流強化を話し合った。エールを送りたい。年末年始にトルコ・ツアーに参加して帰国した筆者には、同国民の親日ぶりが特に印象に残っている。大みそかにホテルのトルコ式蒸気風呂に入ると地元の中年の善男善女で満員。引き返そうとしたら、「ジャポネか、トーキョーか」と聞いてくるので、「イエス」。すると「ここに来い、来い」とスペースを空けてくれる。前日には、トルコ絨毯の店に入った。売り込み攻勢が激しい。好事家の間で「ヘレケ」のブランドで知られる絹の超高級品に魅入られると、「いくらなら買うのか」と迫られる。ヘレケ一枚を織り上げるまでには2人がかりで2年もかかるという。当方にはとても手が出ないのだが、同じツアーの裕福な同胞は何と5割以上も値切って手に入れた。買い物上手な日本人もいるものだ。店主は「景気が悪くて、年内にどうしても売りたかったから仕方ない」とぼやく。
トルコ経済は、実質4%台の経済成長率を保っており、不況とはいえない。ところが、思わぬ逆風を受けている。最大の原因は米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和(QE)縮小である。QE縮小の観測が出始めた昨年前半から、欧米の投資ファンドが一斉にトルコ企業株を売り始め、資本の流出に歯止めがかからない。同国通貨の「リラ」は急落を続けている。リラ安でも自動車など付加価値の高い産業規模は小さく輸出は伸びない。
リラ急落の原因は同国の政情不安にある、という見方もある。確かに盤石に見えたエルドアン政権は最近、側近の汚職騒ぎなどで揺さぶられている。しかし、国際金融の観点からすれば、政局不安は投機筋にとって単なる「売り逃げ」の口実に過ぎない。その証拠に、トルコに限らず、株や通貨の不安は新興国全体に及んでいる。政情が比較的安定しているインドネシアもトルコに同調する形で株価が下落している。
産業基盤に厚みがない多くの新興国は、米QEであふれ出たドル資金が流入したときは株式や不動産市場がにぎわうが、QE縮小に向かい始めた途端に資本流出が始まるのだ。ニューヨーク・ウォール街やロンドン・シティに拠点を持つ投資ファンドはグローバルな資産運用を行う。米国市場がだめなら新興国での運用比率を引き上げるが、米市場が回復してくれば、さっさと手じまいする。投機資金量の膨張をもたらしてきたQEが縮小するなら、投資ファンドの逃げ足も加速するのだ。これまでの「新興国ブーム」はいわば、ドルの洪水に浮かぶバブルだったのだ。一方、アベノミクス日本は株高で浮かれているが、対岸の火事では済まされない。新興国株の急落に加速がかかるようだと、世界の投資家たちも次第に疑心暗鬼になり、株安の波が一挙に米国や日本を襲うかもしれないのだ。
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