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2006-09-28 00:00
連載投稿(1)東アジアでスパゲティ・ボウル現象は起こりうるか
木村福成
慶應義塾大学教授
東アジアのFTA網構築は、参加国間とりわけ日中韓のコーディネーションなしに、ばらばらに五月雨式に進んでいる。その点に着目する欧米の経済学者、政治学者たちは、「スパゲティ・ボウル現象」が東アジアで起きるのではないかとの懸念を表している。
FTAは、参加国の間で域外関税を共通化しないという点で関税同盟と異なる。関税同盟では、域外製品は共通の関税の壁を越えてはいってくるので、少なくとも理論上は、参加国間の貿易について国境を完全に撤廃することが可能となる。一方、FTAの場合には、関税の低い国から迂回して域外製品が入ってくる可能性があるため、参加国同士の貿易フローであっても原産地証明を伴って初めてFTA特恵の対象とされる。
スパゲティ・ボウル現象とは、二国間FTAが錯綜して結ばれていくことから生ずる原産地規則や自由化例外品目等の混乱、そしてそれがゆえに貿易が阻害されてしまう現象を指す。ラテン・アメリカ諸国は多数のFTAを結んでいるが、物品の流れは極めて悪い。その原因の一つがスパゲティ・ボウル現象にあると考えられている。
東アジアでもスパゲティ・ボウル現象が起こりうるのか。筆者は、現状を悪化させるような深刻な悪影響がもたらされることはないと考える。東アジアでは、ラテン・アメリカと異なり、すでに多くの物品が無税あるいはそれに近い形で貿易されている。無税扱いとなるのは、最恵国待遇ベースですでに関税がゼロとなっている場合のほか、投資インセンティヴとしての各種免税措置(duty-drawback system)による場合など、さまざまなケースがある。一企業にとっては、FTAが結ばれるということは、無税扱いとするための手続きの選択肢が増えることを意味する。FTA特恵制度は、少なくともアドホックな免税措置などに比べれば、透明で予測可能性のある政策手段となる可能性が高い。そして、もしFTA特恵制度が不便であれば企業は使わなければよいわけで、少なくともFTAが現状よりも悪い事態を引き起こすとは考えにくい。(つづく)
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